時を超えて

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伝えたい想い

ずっとずっと



心に秘めて











【時を超えて】











「ここは、どこ?」


あたしは今、見渡すかぎりのジャングルのような場所に一人たたずんでいた



ギャアギャアといかにもな鳴き声が聞こえたり、獣の気配がヒシヒシと伝わってくる


「えっと…さっきまであたしは船の上で皆と飲んでいたはずじゃ…」




頭を抱えて先程の出来事を思い出してみる








天気も良いから昼から飲むかーって言う(どんな理由?)サッチ隊長に乗っかって、食堂でいつものメンツで飲み比べにも似た飲み会をしていたわけだけど、なんかその時はいつもより調子が良くてあたしは勧められるままに酒を煽ったんだ


マルコ隊長が止めていた気がするけど、良い具合にサッチ隊長やエース隊長に乗せられあたしはお構いなしに飲み続けた

あー良い気分だなぁって思ってたら案の定、すごい勢いでやってくる吐き気にあたしは「ギャハハハ、だっせーなミユ」と言う笑い声と「だから言ったんだよい」と言う呆れた声を背に、一目散に甲板に飛び出て海へとリバースした(母なる海よ、すまん)


そして出し切ったあたしは、しばらく何もやる気になれなくて力なくボケーっと海を眺めてたら突然の突風

意外と強いその風に、酔いと油断であたしは簡単に吹き飛ばされて海へと落ちた










「…な、情けなさすぎる」





仮にも白ひげ海賊団の二番隊隊員だと言うのに、酔い潰れ吐いたあげく突風に飛ばされて海に落ちるなんて


今更ながら自分の腑甲斐なさに顔が熱くなる思いがした




「でも、何でジャングル?」


しかし、すぐに思考は冷静を取り戻しまわりに広がるジャングルに頭を悩ませる

海に落ちたのにジャングル?グランドラインは海とジャングルが繋がっているのかな?




ガサッ




「!?」

うーんと頭を捻らせていると、不意に背後から物音がし、あたしは咄嗟に振り向き臨戦態勢を取った


ガサガサと不規則な動きをする草むらにあたしは何が出てくるのかと警戒し、ゴクリと息を呑んだ





くっそー、怖いぞこのやろー




いくらあたしが白ひげ海賊団の二番隊隊員(言うの2回目)で、そこいらの男共より強いって言ったって曲りなりにも女の子なわけで、いきなり未知の生物とか出てきちゃった日にはあっさりやられてしまう自信がある!




「お、人だ!」

「ぎゃーごめんなさい!」



そんな恐ろしいことを考えながら恐怖に高鳴る鼓動を感じていると、音とは逆の背後から聞こえた声に体が思いっきり跳ねて叫んでから、恐る恐る振り返った





「こ、子供?」

「おまえ誰だ?」





しかし振り返って見ればそこにいたのは幼い少年で、ビビるあたしを見てキョトンとしながらこちらを見ていた


あたしはその少年にホッと胸を撫で下ろした


「な、なぁんだ、未知なる生物との対面かと思った」

「ミチナル…?それってうめぇのか?!」

「あ、いや…どうだろう。そればっかりは食べてみないと分からない、かな?」


キラキラ目を輝かせる少年になんか変な期待を持たせたようで、あたしは曖昧に答えてみた

すると「そっかー食ってみてぇなぁ」と涎を垂らす少年に逞しさを感じたと同時に、その風貌が誰かに似ているような気がして再び少年をまじまじと見てみた


目の下の傷に麦わら帽子、そして食への執着心・・・まさか



「いやいやいや!ありえないでしょ!だって、奴はもう17歳だからありえないでしょ」

「?」



ポンッと見知った顔が脳裏を過ぎったが、まさかそんな筈はないと、あははと笑えば首を傾げ不思議そうにこちらを見る少年


しかし笑っておいてなんだけど、やっぱ、なんか…似てる?でも、いやいや、でもありえないから、彼はこんなちっこくないから。え、もしかして子供?




「おい」

「ギャッ!」



まじまじと少年を見てありえない想像を膨らましていると、本日何度目かの背後からの声に、すっかり油断していたあたしはとても女とは思えない声を上げており、目の前にいた(しかもかなりの至近距離)少年も驚いたように目を丸めていた


「おい!ルフィに何してんだ!」

「え・・・ルフィ?!」


ドキドキと早鐘打つ心臓を何とか深呼吸して落ち着けようとすれば、背後から聞こえたもう一人の声にあたしは振り返ることなく目の前の少年を見た


ま、まさか本当にあのルフィなの?!


目の前の少年、チビルフィはあたしの驚いた表情など全く気にすることなく、視線をあたしから外すと満面の笑みを見せた



か、可愛い!



チビルフィの笑顔の可愛いこと!
いや、17歳のルフィの笑顔も可愛いんだけどね、このチビルフィの笑顔は100倍ぐらい可愛いよ!チビマジックだね!


「エース!」

「え?!エース隊長?!」


キラキラと目を輝かせてあたしの横を通り過ぎていったチビルフィの言葉に、あたしは思わず反応した


だって知らないジャングルに放り込まれてすっごいすっごい寂しかったんだから!これはあたしを飲ませて酔わせたエース隊長にも責任があるんだから!(普段なら海に落ちることなんてないもん!)


そんなことを考えながら文句の一つでも言ってやろうかと考えると同時に、エース隊長が一緒にこちらに来ているという嬉しさに笑みを浮かべ振り返った(矛盾してる!)




「エースたいちょ・・・?」

「は?」



しかし、振り返った先には誰もおらず、あたしは口は目を丸め一旦停止したが、不機嫌そうな声が聞こえ、視線を落とせば自分よりはるかに小さい少年がこちらを不審げに見据えていてあたしは目を見張ってしまった



「えっと・・・エース、隊長?」

「何だぁ?エースって隊長だったのか?!」



あたしの言葉にエース隊長(仮)の隣に立つチビルフィは目を輝かせたが、エース隊長(仮)はあたしを睨みつけて何も発しない


え、何?!チビルフィの次はチビエース隊長?!って言うか、チビエース隊長(仮)はすっごい睨んでる!めっちゃ睨んでる!こんな小さいのに覇気醸し出してるんですかって言うぐらいの凄み


「えぇっと・・・とりあえずあたしは怪しい者ではありません!」

「めちゃくちゃ怪しいな」

「無視かっ?!」


とりあえずヘラッと笑って怪しくないことをアピールしてみても、一向に睨みを緩めないチビエース隊長(仮)

どうしたもんかなぁ、って思いながらもまじまじとチビルフィ同様にチビエース隊長(仮)を見てみる


少し癖ッ毛で真っ黒な髪に、両頬にあるそばかす、それにこのチビながらにヒシヒシと感じる覇気(みたいな威圧感)



うん、多分、エース隊長(確定)なんだと思う



何となく直感で納得したあたしは、再びうーんと頭を捻らせる



つまり、目の前にいるチビ顔見知り二人を見る限り、あたしは過去にタイムスリップしたってことなの?!しかもなぜかエース隊長とルフィの過去に?!グランドラインは何が起きても不思議じゃないけど、さすがにこれは俄かに信じがたい…けど目の前の二人を見たら信じないほうが無理だし


「なぁ、お前名前は何て言うんだ?」

「おい、ルフィ!」

「あ、ミユだよ」


苦悩するあたしにチビエース隊長とは違って、純粋無垢な瞳でチビルフィに問いかけられたあたしは、その可愛さにだらしなく笑みを作って答える

横ではチビエース隊長が「知らない奴と馴れ馴れしくすんな」と怒っているがルフィはお構い無しのようだ


「ふーん。ミユか!俺はルフィでこっちは兄ちゃんのエースだ!」

「よろしくな!」と言って笑って手を差し出すルフィに呆気に取られながらも、あたしはすぐにその手を取って「よろしく」と呟いた

あ、触れるってことはやっぱり夢ではないんだ


「ほら、エースも握手しろよ」

「んなどこの誰だかわかんねぇ奴と握手なんかするか!」

「か、可愛くない!」


プイッと顔を背けて腕を組むチビエース隊長


いつものエース隊長は誰にでも愛想が良くて礼儀正しいのに、チビエース隊長は全くの真逆のようだ
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