闇を照らす光

□08
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あなた達を見ていると


本当の家族のようで





【08】




「だからなんだ?」

「え?」


住んでいる場所を伝えてから数秒の沈黙、その沈黙を破ったのはエースだった


「遊郭街に住んでるからって何でそんな悲しそうな顔してんだよ?」

「そ、それは・・・」

エースは訝しげな表情でそう問えば、サクラは困ったように口を濁らせ視線を泳がせる

普通、遊郭街に住んでいるとなればそこで働いている者であって、それは見る人から見れば「汚い仕事」であって、そこで働くものは「汚い女」と思う場合がほとんどなので、同じように思われると覚悟していたサクラにとって、エースの言葉は返答しかねる返しだったのだ



ボカッ



「いてっ!」


そんなことを考えながらサクラが答えあぐねていれば、鈍い音とエースの声が部屋に響き、サクラが驚いた顔を上げれば、頭を抱えて不貞腐れたようにマルコを見るエースがいた


「何で殴るんだよ、マルコ!」

「困らせてんじゃねぇよい」

「なっ・・・俺は・・・」

エースに視線を合わせることなくため息混じりに呟くマルコに反論しようと口を開いたエースだが、それはサッチによって遮られた


「エースはアホだからなぁ、仕方ない」

「は?サッチに言われたくねぇし!」

「そのままお返しするし!」

「その喋り方気持ち悪ぃ!」

「うっせ!火!」

「それ悪口じゃねぇし!リーゼント!」

「それチャームポイントだし!」

「腹立つチャームポイントだな!」

「目立っていいだろ!」

「あぁ、燃やしたくなる」


「・・・はぁ」

「・・・」

ギャーギャーといい合いを始めた二人に頭を抱えるマルコと呆気に取られるサクラ


「そのそばかす全部数えてやろうか!」

「数えてみろよ!ただし、全部数えると呪われるけどな!サッチ限定で!」

「限定とか嬉しいんだけど!」

「ポジティブうぜぇ!」

「じゃ、数えるからじっとしてろよ」

「うわっ、おまっ・・・まじで近いから!きもいから!・・・ってか、リーゼント先に当たってるから!」

「おい、お前らいい加減に・・・」

さらにヒートアップする二人の言い合いに、マルコはソロソロ止めようと口を開いた時だった


「っぷ・・・ふふ・・・ははっ・・・」


微かに聞こえてきた笑い声に、エースとサッチはいい合いをやめ、マルコはその笑い声の先に視線を向けた

「そんなに面白かったかよい?」

「ふっ・・・ふふ・・・だって・・・兄弟喧嘩みたいで・・・ふふっ」

口元を押さえ涙目になって笑いを堪えるサクラの言葉に、マルコは呆れたように、だがどこか嬉しそうに笑った

そして、それを聞いていたエースとサッチも、何だか照れくさくなってパッと体を離した


「あー・・・面白かった」

「何か俺、今猛烈に恥ずかしい」

「同じく」

ひとしきり笑い終えたサクラを見て、エースとサッチはバリバリと頭を掻き毟った

サクラはそんな二人を見て「ごめんなさい」と微笑みながら言えば、今度は二人してほんのり頬をそめて視線を外した

「お前ら二人共気持ち悪いよい」

「う、うっせぇ!」

「そ、そんなことより、サクラ!さっさと帰るぞ!」

「え?」


マルコの呆れたため息と視線に慌てて声を上げて否定するサッチに、エースも少し慌てたように口を開けば、サクラは笑いをやめて目を丸める

なぜなら、エースが自分に向かって右手を差し出していたのだ


「帰るんだろ?お前の居場所に」

「・・・私の・・居場所」


エースの言葉を復唱しながら、今まで楽しかった気持ちが嘘のように冷えていくのが分かった




あの場所が今の私の居場所で

そこは暗くて寂しい世界




帰りたくない











ギュッ


「そう、ですね」

サクラはそんな想いを打ち消すようにエースの手を握り締め立ち上がり、それを見たマルコとサッチも少し驚いたようだったがすぐに困ったように笑った


「じゃ、お姫さんを送り届けるとするかい」

「「おうっ」」

「ふふっ・・・よろしくお願いします」


マルコの言葉に元気よく声をあげたエースとサッチに、サクラは小さく笑って頭を下げた
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