闇を照らす光
□09
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気付いてしまった
だけど
気付かなければ良かった
【09】
「あ・・・の、シャンクスさん?」
「・・・」
エースさん達の背が見えなくなるまで見送った後、シャンクスさんは暫く私を離してくれなかった
私も最初は久しぶりに会うシャンクスさんに嬉しくてその胸板に擦り寄っていたけど、冷静になってみるとここは店の前で、辺りを見渡せば多くの人々が好奇の目でこちらを見ていて、シャンクスさんのマントで私の姿は余り見えないものの、ものすごい勢いで恥ずかしくなり、シャンクスさんの胸板を少し押してみた
ギュっ
「・・・っ」
しかし、私の想いは伝わらなかったのか、逆にさらに強く抱きしめられてしまった
その力はすごいもので、私が幾ら力を入れてもビクともしなかった
思えばこんなに接近したことも、シャンクスさんに抱きしめられたこともあの海岸以来で、それを思ったら体中が熱くなった
「シャ、シャンクスさん・・・ここ、外で・・・あの・・・ち、近いし、その・・・」
「・・・」
自分でも情けないぐらいあたふたしながら、意味不明な言葉をつむぐ私
すると、シャンクスさんは少しだけ私から体を離すと、情けない私の顔を覗き見た
「真っ赤だ」
「!!」
そして、それだけ言うと、シャンクスさんは嬉しそうな顔でにんまり笑い、そのシャンクスさんの言葉と表情にさらに顔が熱くなって俯いた
するとシャンクスさんは私の頭にその大きな手を載せた
「今日は俺一人だが、部屋は空いてるか?」
「・・・は、はい」
さっきまでの表情とは打って変わって嬉しそうな笑顔で言うシャンクスさんに、私は真っ赤であろう顔を見せないように、俯きながら首を縦に振った
店に戻ってすぐ、私は何食わぬ顔で受付に向かえば、店主に「遅かったな」と少し睨まれたが「中々買うものが見つからなくて」といって軽く交わした(実際、それはこの辺の店では売っていないものだ)
「それよりお客様を連れてきたの」
「客?買出しの間にも男引っ掛けてくるたぁ、bPはさすがだなぁ」
「・・・っ」
店主の貶すような言葉に私は一瞬表情を歪めたが、こんなこと言われるのは慣れてるから、すぐに作り笑いを貼り付け「まぁね」と言った
「で、部屋は空いてる?」
「あぁ、個室ならな」
「じゃあ一個使うから」
「・・・あぁ」
用が済めばこんな男の顔など見たくもなく、私は足早にその場を去ろうと受付のカウンターから体を離した
早くシャンクスさんをお部屋に通してあげなきゃ
そう思ったら自然と頬が緩んで、私は急いで店の暖簾を掻き分けた
「・・・」
その後ろでこちらを見据えている店主の表情など気付きもせずに