闇を照らす光

□14
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それは




忘れられない忌まわしい過去











【14】











「サクラ、お前が入れ」

数年前のある日
私は徐々に慣れてきたこの仕事を、いつものように淡々とこなしていた

客を取る前に行われる、シュミレーションと称した店主との行為も拒否し、私は今だ貞操を守ったまま酒の強さを武器にこの業界を良くも悪くものし上がっていた

噂が噂を呼び、私は見る見るうちに持ち上げられ、いつのまにか1の座が目の前に迫っていた


「私、ですか?」

次の客に移ろうとしていたところを呼び止められ、私は自分を指差せば、店主は腕を組み「さっさと来い」と声を荒げ、私はそれを不快に思いながらも拒否権はなく、渋々店主へと歩み寄った

「俺の知り合いの客だ。下手な真似するんじゃねぇぞ」

「分かりました」

客室へと歩く道中、店主がそんなことを言うので、どうせたいした客じゃないのだろうと心の中で悪態付きながら足を進めた


「俺の名はジンだ、よろしくな」

部屋に入ってすぐ、そう声を発したのは金髪の男で、ジンと名乗ったその男は人懐っこい笑みを浮かべていた

私はその笑顔に拍子抜けた

「(まともな人だ・・・)」

店主の知り合いだと言うから、下品で下心の塊みたいな奴らが来ると思っていたので、ジンを最初に見たとき私はどこかホッとしたような安心したような気持ちになった

そして、ジン達は優しく、親切で誠実に私に接し、毎日のようにここへ通った

海賊でグランドラインに入ったのはつい最近だということや、店主とは昔からの縁でエターナルポーズを受け取りやってきたことなど、様々な話を聞いた


「そうかぁ・・・幼い頃に親に売られたのか」

「はい・・・」

そして気づけば自分の身の上話をするほど私はジンに気を許していた

ジンは私の話を聞くと本当に悲しそうに眉を顰め頭を優しく撫でた

「そりゃ、辛かったなぁ」

「でも、悪いことばかりじゃないんですよ。こうしてジンさん達にも会えたんですから」

「そうか!そりゃそうだ!嬉しいこと言ってくれるねぇ、サクラは」

豪快に笑い私の頭をクシャクシャ撫でるジンに、その時の私は確かに心を許し、この暗く冷たい世界を生きる支えになりつつあった





そして数日後

ジン達は新たな冒険に出るため、この島を出て行くことになった

前日、ジンがいつものようにやってきて私がお酌をしていれば急に切り出された話

「サクラ、俺たちは明日にでもこの島を出ようと思ってる」

「え?!」

私はその話を聞いて絶望するようだった

初めて出来た心許せる人たちが、もう明日からはここには来ないということが、その時の私には考えられなかった

「お前には色々世話になったな!またいつかここに来ることがあったらよろしく頼むよ」

「・・・・」

そしてジンはいつものように私の頭を優しく撫でて、いつものように酒を豪快に飲んで遊郭を後にした

私はとにかく辛くて、離れたくなくて、せっかく手にいれた心許せる人たちだったから




そして決断した

ジン達に付いて行くって


「はっ・・・はぁ、はぁ」

まだ日の昇らない明け方、私は最小限の荷物を持って部屋を飛び出していた

いつもなら見張りが立っているのに今日は誰もおらず、不思議なぐらいすんなりと遊郭を飛び出すことが出来た



そう、今思えばそこからおかしかったんだ






ジン達は明け方船を出すと言っていたからとにかく私は全速力で港へと向かった

私はジンに船に乗せてもらうように、一緒に連れて行ってもらうようにお願いするつもりだった


きっとジンなら分かってくれる

こんな私を連れて言ってくれる

そう思っての行動だった



「ジンさん!」

「サクラ!」

港に付く頃、船は出港の準備をしていて、私は慌てて声を張り上げていた

すると、すぐに気づいたように出てきたのはジン本人で、私は荒くなる呼吸を必死で抑えようと深呼吸をした

「ジンさん・・・はぁ、私・・・」

「どうした?取りあえず船に乗れ!」

息を切らす私を見て、ジンは少し驚いた素振りをしたがすぐにそう言うと、梯子を下ろした

私は言われるがままその梯子に登り、甲板へと降り立った


「サクラ?」

「はぁ、はぁ・・・ジンさん、私も・・・この船に乗せてほしいの!」

「・・・この船に乗りたい?」

すぐさま駆け寄ってきたジンに私はすがりつくように懇願した

もうあそこには戻りたくない

一緒に連れて行ってほしい

その思いだけで乗った船だった


「そうか、じゃあ、まぁ、取りあえず俺の部屋に来いよ」

「え・・・あ、はい」

暫く何の反応も見せなかったジンだったが、すぐに立ち上がると私に背を向けそれだけ言って歩き出した

私は慌てて置いていかれないように立ち上がりその後に付いて行った



バタン

そしてたどり着いた一つの部屋

扉を開け「まぁ、入れよ」と言うジンに促され部屋に入ると、後から入ってきたジンが後ろ手で扉を閉める音がした

しかし、その時の私はジンを完全に信用しきっていたため何の警戒心もなく部屋を見渡していた

「広いお部屋ですね」

「まぁ、船長だからなぁ」

なんでもない会話だったはずなのに、何故かその時、違和感を感じた

そして、不意に感じる冷たい気配に、ジンの方へと振り返った


「ジン、さん?」

「何だ、サクラ?何をそんなに怖がっている?」

「え、いや・・・何だか変な感じがして・・・」

「変な感じ?」

「あ、いえ・・・」

どこかいつものジンとは違う雰囲気を感じ、そして何より余計なことを言えば船に乗せてもらえないんじゃないかと思い口を閉じた

そして、再びジンを見据えて口を開いた

「私をこの船に乗せてください」

「・・・」

深くお辞儀をし、懸命に声を上げた

しかし、ジンは一向に何も言うことなくただ黙って私を見据えていたので、どうしたのかと思い顔を上げた

「・・・っ!」

そして、そのジンの顔を見て目を丸めた







「いいだろう。その代わり、たっぷり可愛がらせてもらうからなぁ」

その顔は酷く歪み、今まで見たこともない卑下た表情だった

「ジン・・・さ・・・」

怖くなって後ずさったが、すぐにベッドに膝がぶつかり、ベッドの上に倒れこんだ

ギシッと軋むベッドに何が何だか分からなかった

「ジンさん・・・ど、うしたんですか?」

体を上半身だけ起こし、ベッドの横に佇みこちらを見下ろすジンに、私は訳が分からず問いかける

するとジンはニヤッと汚い笑みを浮かべた


「お前は本当に馬鹿だよなぁ!」

「え・・・キャッ!」

ジンはそう言うと私の上に跨り、私の両腕を頭上で一まとめにするとロープで縛った

ギリッと血が止まるんじゃないかと思うほどきつく縛られた手首に激痛が走った

「単純だよなぁ・・・少し優しくしてやりゃぁホイホイ懐いてきやがって」

「・・・っ」

「遊郭に行って金払って、何もしないで帰るなんてよぉ・・・そんな奴、いるわけねぇだろ!」

「なっ・・・」

「海賊に夢見た馬鹿な自分にせいぜい後悔するんだな!」

言い終わるのと同時にビリッと引き裂かれるTシャツと、それによって露になる下着

あまりに突然の出来事に何一つ抵抗できなくて、それよりも、今目の前で卑しく笑い言葉を発するジンに酷く絶望していた

「何もしらねぇで笑って・・・遊女のくせに一丁前に貞操なんか守りやがって!遊女は大人しく遊ばれてりゃいいんだよ!」

「や・・・いや・・・」

露になった胸を下着ごと鷲掴みにされ、私はその行為に激しい嫌悪感を覚えた

しかしジンの行為は止まることなく、またその言葉も続く


「俺がこの時をどんなに待ちわびたか!待たされた分、たーっぷり遊ばせてもらうからなぁ!」

「い、やぁぁぁ!!」




そうして私は成す術もなくジンに犯され続けた

何分、何時間かは分からないが、私にとってそれは無限に続くんじゃないかと思うほど長く地獄の時だった

初めての行為なのにジンに優しさのかけらもなく、ただ自分の快楽のためだけに私を貫き吐き出しの繰り返しで、私は初めてなのもあるが恐怖と悲しみで痛みだけが続いた
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