時を超えて
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【時を超えて】
第2話
「「うんめー」」
二人の声がジャングルにこだましたのは、もうすっかり辺りが暗やみに包まれた頃だった
あのあと、約束通りあたしは獣を狩ると、現在二人が暮らす場所に連れられ、二人に夕飯を作ってあげたんだけど、すごい美味しそうに食べてくれるから作った甲斐があったな(サッチ隊長に教えてもらっておいて良かった)
焚き火を挟んだ向かいに並んで肉を頬張る二人にあたしは思わず頬が緩んだ
「それにしても、チビルフィもチビエース隊長も小さいときからよく食べるんだね」
「こんなん普通だ!」
ペロリと一瞬で目の前の料理を食べ勧めていく二人に感心したように呟けば、チビルフィはニシシと笑ってまた口に肉を放り投げた
「その呼び方やめろよ」
「え?」
そんな二人の食べっぷりをまじまじと見ていれば、不機嫌そうなチビエース隊長の声にあたしは目を丸めた
「俺の名前はエースでこいつはルフィ。チビとか隊長とかつけんなよ」
「あ、ごめんごめん。そうだよね、チビとか言われたら不快だよね。じゃあ、ルフィとエー…」
あたしはそこまで言うと一旦口を閉じた
何事かと眉をひそめるチビエース隊長(隣のチビルフィはお構いなしに食べ続けてる)
いや、だって、いくら目の前のエース隊長が小さいからってエース隊長はエース隊長なわけで・・・それを思ったら呼び捨てにすることに、気恥ずかしさから抵抗を感じてしまった
「別に、いいたくねぇなら良いけどさ・・・」
ポツリと呟いたチビエース隊長にあたしはハッと我に帰ってその表情を伺えば、チビエース隊長は少し悲しそうなすねたような表情で肉を頬張った
その表情を見てたらあたしまですごく悲しくなって、あたしはもう自分のこのくだらない固定概念を打ち砕くことにした
「エ、エース!」
「!!」
うひゃ〜、言っちゃった。何これ、半端なく恥ずかしいんだけど!しかも目の前のチビエース隊長は呼ばれたことに驚いたのか目をまん丸にしてあたしを凝視している(あ、その顔も可愛い)
恥ずかしさで変な汗が流れるが、チビエース隊長の目を真っ直ぐ見据えて笑みを浮かべれば、チビエース隊長は目を少し伏せた
「・・・なんだよ」
「え、あ、呼んでみただけだよ」
「用もないのに呼ぶなよ!」
「な、何よ!呼んでほしそうな顔したくせにー!」
「し、してねぇよ!」
「してた!」
「してねぇ!」
理不尽に怒鳴られたもんだから、さすがのあたしも頭にきて言い合ってたけど、ルフィの「仲いいなー」と言うひと言にその言い合いは一先ず沈静した
若干変な雰囲気が漂う中、あたしは肉を手に取りながら小さい子相手にムキになった自分を反省しつつ、今だ不機嫌なチビエース隊長を見て、あたしはあることを考え付いた
「エース」
「・・・何だよ」
「ん、呼んでみただけだよ」
「お前っ」
ニコっと笑って言えば、チビエース隊長はまた目を吊り上げて怒鳴ろうとするが、あたしはその声を遮るように続ける
元の時間に戻ったらきっとエース隊長を呼び捨てに出来ることなんてそうそうないだろうから、あたしは今のうちにいっぱいその名を呟くことにしたのだ
「エース!」
「・・・っ」
「エース!」
「・・・」
そして再びその名を呼べば、チビエース隊長はちょっと驚いたような顔をした
「エース」
「お前・・・わけわかんねぇ」
「よく言われる」と返事をし、何だか知らないけど恥ずかしそうに俯くチビエース隊長が可愛くて、その頭を撫でたら思いっきり払われた(かなり傷つく)
「エース、ルフィ、改めてよろしくね」
だけどどんなことがあってもめげないのがあたしのいいところ!
だから、あたしは満面の笑みを二人に向けた
「おう、よろしくな、ミユ」
「・・・ふんっ」
肉を頬張りながら満面の笑みを向けてくれるルフィと、膝に頬杖ついてそっぽを向くエース
二人とも対照的な反応だけど、あたしのこと受け入れようとしてくれてるのは伝わってくるからまぁ、いっか!
そして、その日の夜は3人で空を眺めながら寝た(気候が夏っぽくてよかった)
寝て起きたら元に戻ってましたーじゃ、今のやり取りは全くの無意味なものになるんだけど、とちょっと心の隅で思いながらも、あたしは二人が寝たのを確認して自分も夢の中へと落ちていった
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