時を超えて

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【時を超えて】
第4話















「じゃ、空腹を紛らわすためにお風呂に入ろう!」


「「風呂?」」


テントに戻ったあたしたちだったが、エースとルフィの空腹は最高潮のようで、ギュルギュルと鳴り響く腹の音に耐えかねて、あたしは風呂に入ることを提案した


他ごとすれば気も紛れるだろうし、思えば昨日から動き回ってはいるもののお風呂に入っていない


汗はかくし汚れるしで、考えだしたら一刻も早くお風呂に入りたくなってきた



「でも、この辺に風呂なんてねーぞ」

「ないなら作る!サバイバルの鉄則よ」

「すっげー!ミユは風呂作れんのか?!」

「為せば成る!…って、良いところにドラム缶発見!」


ナイスタイミングで転がっていたドラム缶を見つけると、あたしはルフィやエースにも手伝ってもらい、そのドラム缶を焚き火の上に乗せた

結構大きいドラム缶で、あたしの腰ぐらいの深さがある


「よーし!じゃあ早速お風呂沸かすわよ」

「おー!」

「本当にこんなんで風呂ができんのか?」


キラキラ目を輝かせるルフィとは正反対に半信半疑のエースにあたしは苦笑いを浮かべた



うん、まぁ、初めて作るしね!だけど、確かエース隊長達が作ってたのを見たことがあるし、それを思い出しながらやれば何とかなるよね!



そう自分を納得させればやる気も起きて、近くの川に水を汲みに行き、薪を集めてお湯を沸かし、ドラム缶の底に木の板を敷き、あっという間にドラム缶風呂が完成した








「できたー!」

「すっげー!本当に風呂ができた」

「はぁ、やればできるもんなんだな」



かなりどろどろになったけど、完成させた喜びは半端なくて、あたしは早速入ろうと服に手をかけたが、ある重大な問題が浮上する



「あたし着替えもタオルもないー」



何にも持たずに突然タイムスリップしたから当たり前だが、せっかく綺麗になっても着替えるものがなければ一緒だ



「着替えとタオルならこれがあるぞ」

「え?」


「タダンのだからでかいかもしんねぇけど、使えよ」



ダダンって初日にも聞いた名前だなぁ、と思っていると、どこから取り出したのか、巨大なタオルとワンピース型のパジャマを数枚手に取り笑うルフィにエースもニッと口端を釣り上げて呟く。「寝床に敷く用に持ってきたんだけどな」と言うルフィの言葉はスルーして、あたしはありがたくその着替えとタオルを頂戴した




「ありがとー!」



嬉しくて叫んで二人に抱きつけば、ルフィは笑みを濃くしエースは「は、離れろ」と言って慌てていた


「よし、これで心置きなくお風呂に入れるね」 

「よっしゃー!入ろー!」





「ちょっと待て」




「「ん?」」


やっとお風呂に入れると思うとテンションガ上がったが、エースの言葉にピタリと動きを止めそちらを見れば、エースは何故か難しい顔をしていた


「どうしたの、エース?」

「どうしたって言うか・・・お前、あれだよ、風呂って・・・一緒に入るのか?」

「当ったり前だろ!皆で入ったほうが楽しいじゃねぇか!」

「うんうん!エースもルフィも小さいから3人で入れそうだし」

「・・・」


あたしとルフィの返事に、眉間の皺を濃くするエースにあたしはルフィと顔を見合わせて首をかしげた


あ、もしかして一緒に入ることに抵抗があるのかな?ルフィはともかくエースはもう結構大きいもんね!でもなぁ、何て言ったってあたしから見たらまだまだ幼い二人だから、全然問題ないんだけどなー


「んじゃあ入ろうぜ、ミユ!」

「あ、うん!ほら、エースも早く!」

「・・・あぁ」



ポイポイっと服を脱ぎだすルフィを見て、あたしはとりあえずテントに入って服を脱ぎ捨てると体にタオルを巻いた



「では、一番風呂入ります!」

「早く、早く!」

「・・・」



ドラム缶風呂の前に大きな石を置き、あたしは急かすルフィの言葉を背に受けゆっくりとお風呂の中へと体を沈めた


途端に冷えた体にジワジワと熱めのお湯が染み渡る


「ふわぁ〜良い気持ち〜」

意外にも良い温度のお湯で、あたしは思わずため息を漏らしていた


あー気持ち〜このまま寝ちゃえそう〜





「ミユ、自分だけずるいぞ!」

「は!いけない、寝そうだった!」





まどろむ思考を引き戻したのはルフィの声で、あたしはハッと我に返ると急いで外を覗けば、そこには一丁前に腰にタオルを巻き今か今かと待ちわびるルフィの姿があった

あたしはそれを見て可愛いなぁと思いながら、そっとその両脇に手を入れた



「はい、熱くない?」

「ふえぇ〜気持ちいなぁ〜」



一気に持ち上げお湯に浸からせれば、ルフィはあたしと全く同じ表情でドラム缶に顎を乗せてまどろむ

そんな姿を見てクスッと笑いながら、あたしは次にエースを見た


「エース、おいで」

「・・・」

ドラム缶から少し離れたところでルフィと同じように腰にタオルを巻き、未だに不貞腐れた顔をするエースだったが、あたしの呼びかけに少し戸惑いながらも近づいてきた

あたしは照れくさそうに視線を泳がせるエースを可愛いな、と思いながら、ルフィのときと同じようにその両脇に手を入れ持ち上げるとお湯の中へと誘った


「どう?気持ちいいでしょ?」

「ん〜・・・」

「何、その反応は?」


背を向けて肩までお湯に浸かるエースの反応は曖昧だったが、文句の出ないところを見ると気に入ったようだった



あたしはまどろむ二人を見て、自然と笑みがこぼれた



「あ、星が落ちた!」

「え、どこどこ?!」



暫くボーっと湯に浸かっていると、ルフィが突然空に向かって指を指し、キラキラと目を輝かせて叫んだ

あたしとエースはそれに驚きながらもそれを一目見ようと空を仰ぎ見るが、どこにもその光景はない


「どこに星が落ちたんだよ!?」

「あっれーおかしいなぁ・・・確かに見たんだけどなぁ。ヒューって星が動くのが」


「あぁ!それは流れ星って言うんだよ。流れ星は一瞬だからね。よぉく見てないとすぐ消えちゃうよ」

そう教えればルフィもエースも目を輝かせて懸命に空を見上げて流れ星を探し出した


そんな様子が微笑ましくて、あたしの頬は先ほどから緩みっぱなしだ



「そうそう!流れ星が消えないうちに3回願い事を唱えると、それが本当に叶うって言われてるんだよ」

「えー!そうなのか?!」

「願いが叶う・・・」




確かこれはエース隊長から教えてもらったんだよね!エース隊長がこんなメルヘンチックなこと知ってたなんてちょっと驚きだったなぁ(失礼)


あたしの言葉にさらに目を輝かせるルフィとエースにあたしはクスクス笑うと、目の端にキラリと写る星に空を見上げた



「あ、流れ星」



そう言って顔を上げれば、エースもルフィも勢い良く空を見上げた




「肉が喰いたい、肉が喰いたい、肉が喰いたい」


「あはは・・・今日は食べれなかったからね」





真剣に星に願うルフィに、そういえば夕飯が食べれなくてお風呂に入ることにしたんだったと思い出しながら苦笑した

そしてその横で同じように空を仰ぐエース



「エースは何てお願い事したの?」


「・・・教えねぇ」




こちらを一切見ず、だけど口端を上げて笑って呟くエース

またまた可愛くないなぁ、って思いながらもあたしはその生意気なエースの横顔に、今は会えないエース隊長の面影を見た気がした









「(ずっとこんな時間が続きますように)」











エースがそう願っていたことなど知るよしもなく、あたしはまた空を見上げた

















そしてお風呂から出てさっぱりしたあたし達は、湯冷めしないようにテントの中で3人川の字になって眠った






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