時を超えて

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【時を超えて】
第5話










「ふぁ!」



翌日


時計は無いが太陽の位置からしてまだ朝早いだろうと思われる時間帯にあたしは目を覚ました


未だにスヤスヤ可愛い顔して眠るエースとルフィを見て顔をニヤニヤさせながら、二人を起こさないようにそろりとテントを抜け出した




「何かすっごい幸せな気分!」




テントを出てすぐ、あたしは太陽に向かって伸びをしてから大きな独り言を呟いた

だって、目が覚めたら可愛い可愛いエースとルフィの寝顔があるなんて・・・癒し!朝から癒されるとか素敵過ぎる!



「朝からうるせーな」

「あ、エースおはよ!」

タイムスリップも悪くないなーなんて思いながらニコニコ眩しい太陽を眺めていると(目が焼ける!)、背後からまだ眠たそうな声ガ聞こえて振り返れば、そこには声と同じように眠そうに目をこすりテントから顔を覗かせるエースがいた

目を擦る仕草とピョンっと付いた寝癖がかなり胸キュンで、あたしはまただらしなく笑みを作って挨拶をした


「ん、はよ・・・」


するとエースは何だか恥ずかしそうに視線を泳がせると小さく返事をしてくれた


うん、何か良い感じに仲良くなれてる!



「寝癖付いてるよ」

「ん?」


よく分かんないけど照れ照れしてるエースが可愛くて、あたしはそんな口実を作ってその髪を撫でてみた

昨日思いっきり払われたからちょっと内心ビクビクしてたけど、寝起きだからなのか何だか気持ちよさそうに撫でられているエース


「水つければ直るかな?」

「んー」


ホッとすると共に今のうちにいっぱい撫でてみると、エースは目を細めて気持ちよさそうにしている


すごく可愛い!


今まで可愛げなかったエースだけど、ここに来てこのギャップはまさにツンデレ!可愛すぎてあたしふざけた顔になっちゃうよ!



「おはよー」

「あ、ルフィおはよう!」

「!!?」



ニヤニヤしながら存分にエースの髪を堪能していると、再び寝ぼけ声と共に顔を出したルフィ

あたしはニヤニヤしながら挨拶すれば、ルフィは「何やってんだー」と目を擦りながら問いかけてくる



バシッ



「な、何でもねぇよ!」

「え、急にツン?!」



そしたら次の瞬間に、あたしの手はエースによって払われてしまった(結構痛い)

何だよーデレの時間は終わりかよー。もうちょっとデレデレ甘えてくれてもいいのになぁー(だってエース隊長は絶対甘えなさそうだもん)


「何落ち込んでんだ?」

「大人の事情です」

「・・・」


ルフィが近づいてきた顔を覗き込まれ、どうやら酷い顔をしていたようでルフィに問いかけられたが、そこは苦笑しておいた



「ふーん。大人って大変だな」

「そうよ、大人は色々あんのよ!」

「嘘くせー」



そっぽを向きながら疑いのまなざしを向けてくるエースに「あんたのせいだよ」と思いながらもグッとその言葉を飲み込んだ


「そんなことより、飯取りに行こうぜ!」

「そうだな!昨日食い損ねたからな!」


そしてそんなあたしを無視して狩りの準備を始める二人に、あたしは腰に手を当てて口を開いた



「ちょっと待ったー!」

「「!!?」」


そしてあたしの声に驚いたように振りかえる二人にあたしはニヤッと口元に笑みを浮かべた



「朝ごはんの前に、洗濯に行きまーす!」

「「洗濯ぅ!?」」



あたしの提案に二人は目を丸め、口をあんぐりさせた(その顔も可愛い)

そしてあたしはそんな二人を急かし、今まで着ていた衣類を全部持たせると、昨日お風呂の水を汲みに行った小川に向かった


「それにしても、今まで洗濯を一度もしたこと無いってどういうことよ?」

「別に洗濯しなくても服は着れるぞ」

「まぁ、そうなんだけどね・・・」

「めんどくせーしな」

「・・・」


エースの言葉にはぁと小さくため息をついた



そう、この二人は服を洗濯すると言うことをしないらしい


毎日あんなに動き回って泥だらけになっていると言うのに、特に気にすることなく大量の服を交代で着ていたらしい(服はマキノさんって言う人がくれるんだって)



まぁ、男の子だし、小さいし・・・分からなくはないけど衛生的に良くないと思う



「じゃあ、今日を機に洗濯を覚えてね」

「「えー」」

「えーじゃない!」


不満そうに口を尖らせる二人に声を荒げるが二人は「腹へったー」と呟くばかりだった







「じゃ、さっそく洗ってみよう!」

「へ〜い」

「・・・めんどくせぇ」


小川に着き、意気揚々と腕を捲くるあたしに二人は全くやる気なく呟く

あたしはそんな二人を見て苦笑するが、すぐに口端を吊り上げた



「洗濯終わらなかったらもうご飯作ってあげないから」

「それは嫌だ!」

「ず、ずりぃぞ!」


「ふっふーん♪」




見る見るうちに焦った表情になる二人に可愛いなぁと思いつつ、そんなにあたしの手料理が美味しかったのかと嬉しくなる

そしてあたしはそんな二人を尻目に小川に昨日着ていたTシャツをつけた



「そんなんで綺麗になるのか?」

「あんまり変わらねぇんじゃねぇのか?」



あたしの行為が物珍しく興味を持ったようで、あたしの手元をがん見して呟く二人


うん、良い具合に興味を持ってくれた



「これを使ってゴシゴシすれば綺麗になるんだよ!」

「石鹸?!」

「そんなのどこにあったんだよ?」

「テントの中の大きな袋の中を漁ったら出てきたの」


「勝手に漁るなよ!」


エースに突っ込まれながらもあたしはその石鹸を箱から取り出すと、汚れている部分に直接こすり付けた


そして水に少しつけてからゴシゴシと擦ればドンドン泡立っていく


「ほーら!この泡で優しくゴシゴシするとドンドン綺麗になっていくんだよ!」


「へぇー!すげぇな!面白そうだ!」

「泡がどんどん出てくる」

「ほら、やってみて」


キラキラと目を輝かせる二人にあたしは内心ガッツポーズを決め、石鹸を渡した

すると二人はあたしの見よう見まねで自分達の服をゴシゴシと洗いだした


「おぉ!どんどん汚れが落ちる!」

「すげなぁ!」

「でしょ?」


ゴシゴシジャバジャバと服を洗っていく二人は、頬に泡をつけながら感動しているようだった

そんな二人の笑顔を見てあたしはまた嬉しくなった



ビリッ


「ぎゃー!破れたー!」

「馬鹿だなールフィ。俺みたいにこうやって丁寧に・・・」


ビリッ


「ぎゃー!破れたー!」

「エースも一緒じゃねぇか!」



幼いながらも力が強すぎるのか、ビリビリと服の破れる音と二人の笑い声が木霊する


いやぁ、可愛いね!こんな些細なことで笑えるなんて、お姉さん羨ましいよ


あんなに大量に服があるんだし、1枚2枚破れたってどうってことないでしょ、と、そんなことを考えながら自分の服を洗い終えて桶にしまい、フッと二人に視線を戻し、あたしは目を丸めた



「って、破りすぎでしょ!」

「「ん?」」



目の前にはビリビリに破られた服の山が出来つつあり、しかも当の本人達は無駄に泡を作って川で遊び始めていた(エース隊長は洗濯上手なのに!)


おいおい、当初の目的忘れてない?



「ちょっと二人共洗濯終わってないじゃない!」

「もう飽きたー」

「すぐ破けちまうしな」

「あんたら力強すぎ!」



バシャバシャと川遊びをする二人を見て、あたしはハァと小さくため息をついて、仕方がないので残りの二人の洗濯も洗ってあげることにした(石鹸没収!)





「ふぅ!終わった!」



暫らく黙々と服を洗い続ければ、大量にあった洗濯物は全て無くなった

やっと終わり桶に全ての洗濯物を重ねるとそれは山のようで、あたしは自分で自分を褒めたかった





「ミユ!」

「ん?」




そんな満足感に浸っていると、ルフィの声が聞こえそちらに視線を向けると、そこには両手に魚を持ったルフィとエースがこちらを見て笑っていた


「大量だぞ!」

「素手で取ったの?」

「当たり前だ!ほら、桶の中もいっぱいだ!」


「・・・野生児だ」


どうやらあたしが洗濯に奮闘していた間に二人は魚を素手で採っていたらしい

洗濯を入れていた桶の中にはぎっしりと魚が詰められていて、ビチビチと飛び跳ねている


ニシシと笑って「昼飯は焼き魚にしようぜ!」と言うエースに、あたしはクスッと笑みを浮かべ大きく頷いた



うん、昨日から何も食べてないし洗濯に力使ったからかなりおなかすいたよ!



川から上がった二人は馴れた手つきで石を組み立て薪を集めると、石でカチカチと火花を散らして火を焚きつけた

うん、最初も思ったけどエースが懸命に火をつける姿が必見だと思う(だってエース隊長は自ら火だもん)


「んめー!」

「うん、おいしい!」

「たまには魚もいいな!」


もぐもぐと焼けた魚を美味しそうに頬張る二人はやっぱり可愛い(食べてる姿が一番可愛い気がする)

「でも、エースもルフィも洗濯物下手すぎだよね」

「最初は面白かったんだけどなぁ!」

「あんなもん出来なくても生きていけるしな」

「だーめだめ!衛生的によくない!体は綺麗にしておくに越したことはないんだよ!」

「ふーん」

「へー」

「(信じてないな)」


あたしの話に興味なさそうに呟き次の魚に手を伸ばす二人をあたしはジト目で見て小さく息を吐いた


「あたしもいつまでここにいられるか分からないんだからね」


そして、ポツリ無意識に呟いた言葉にピクッと反応したのは隣にいたエースで、エースは魚から口を離すと眉間に皺を寄せてあたしを見た


「どういう、意味だ?」

「え?」


不機嫌そうに呟くエースにあたしは自分で無意識に呟いた言葉を思い出ししまったと顔をしかめた

エースやルフィには未来のことは極力伝えないように努め、あまりそのことについて話さないようにしていたので、追求されると返答に困る


アワアワとどうしようかと戸惑っていると、その様子に気づいたルフィも魚を頬張りながら「どうしたんだ?」と顔を覗かせてきた



「えっと、最初にも言ったように、あたしには帰る場所があって・・・だから、いつかは帰らなきゃいけないし、ずっと一緒にはいられないって意味、だよ」

「・・・!」

「えーそうなのか?!」




戸惑いながらも伝えれば、眉間の皺を更に濃くするエースと眉尻を下げて悲しそうな表情をして叫ぶルフィ


ふ、二人共そんな顔で見ないでよ!


確かにあたしだって二人と一緒にいて、ずっとここにいてもいいかなぁ、何て思ったけど・・でも、だけど、やっぱり白ひげ海賊団に戻りたいよ

オヤジさんやマルコ隊長や、皆が待ってるもん(きっと)





それに、エース隊長に会いたい






「ミユ〜帰るなよ〜」

「ルフィ・・・」



突然、ガシッと腕を掴まれたかと思うとそこにはあたしの腕に抱きつくルフィが半泣きでこちらを見ている

そんな顔されたら何て答えて言いか分からないよ!




「ルフィ、泣くな!」

「うっ・・・」





どうしようかと言葉に詰まっていると、不意に聞こえた厳しい声にあたしはそちらに視線を移し、ルフィはグッと唇を噛み締め涙を堪えた







「エース・・・」

「俺は別にずっと一緒にいてほしいなんて思っちゃいねぇからな!」






そしてエースはあたしの視線を感じたのか、フンっとあたしから視線を背けると、荒々しく魚に被りついた

あたしはその言葉に胸が痛くなった





「俺はずっと一緒にいてほしい〜!」

「だから泣くな!」







そして遂に溢れた涙と共に叫ぶルフィに、エースは再び怒鳴った






「・・・」






あたしは何も言うことが出来ず、ただルフィが泣き止むようにその小さな頭を撫でることしか出来なかった





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