時を超えて
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【時を超えて】
第9話
エースの叫び声を最後に、あたしは沈み行く意識の中、エース隊長と出会ったときのことを思い出していた
『お前、名前は?』
『え?ミユ・・・ですけど?』
あたしとエース隊長が出会ったのは、白ひげ海賊団に入るちょっと前
エース隊長はまだスペード海賊団の船長さんをやっていて、あたしは特に目的もなくグランドラインを旅していた
『俺のこと、知ってるか?』
『ん?いや、知らないです』
自分のことを指差して緊張した面持ちで問いかけてくるエース隊長に、あたしは新手のナンパか?と思いつつも訝しげな表情でエース隊長を見ていた(後にすごいルーキーって知って驚愕するんだけど)
『・・・そっか』
『えっと・・・あなたは?』
何だかすごく不機嫌そうな悲しそうな顔をするから、申し訳なくなってあたしが逆に問い返せば、エース隊長は「あぁ、これは失礼」と呟くと、オレンジ色のテンガロンハットに片手を沿え軽くお辞儀した
『俺の名はポートガス・D・エース。海賊だ』
『エース・・・さん?』
何だか懐かしい響きの名前にキョトンとしていると、よろしくな、と言って差し出された手とその笑顔に胸が高鳴った
あたしは何となく、海賊だけど悪い人だとは思えなくて、その手をとって笑みを返した
『よろしくです』
そしたらエース隊長はちょっと頬を染めていた
そしてあたしはエース隊長に気に入られ、スペード海賊団に入り、そしてエース隊長の野望の下、いつの間にやら白ひげ海賊団の仲間入りをしていた
新しい仲間が出来て、新しい環境でエース隊長は船長から二番隊の隊長になって、真っ先に「二番隊に移動だ」って言われたのを覚えてる(元々1番隊だったから)
あたしは嬉しくて即答して、そしたらエース隊長はまたあの太陽みたいな笑みを浮かべてくれた
『俺が、守ってやるからな!』
『いーえ!あたしが隊長を守ります!』
そんな会話をしながら、あたしは芽生え始めていたエース隊長への気持ちを抑えつつ、彼の隣にいられることに日々喜びを感じていた
最後にもう一度エース隊長に会いたかったなぁ
脳裏に浮かぶエース隊長の笑顔に、あたしはまた涙を零した
だけど、後悔はしてないよ
エースやルフィを守れたんだもん
悲しませちゃったことはすごく申し訳なかったけど…だけど、二人の未来を守れたと思えば勝手だけど納得する
うん、悔いは、ないよ
そう一人納得して、あたしは暗闇に吸い込まれるように意識を失った