時を超えて

□10
1ページ/3ページ

【時を超えて】
最終話




























「そして、気づいたらベッドの上でした・・・」

「・・・」


どれぐらい話していただろう

あたしは覚えている限りのことをエース隊長に伝えた

海に落ちて気付いたらジャングルだったこと

幼いエース隊長やルフィに出会い過ごしたこと

そしてあたしは銃に打たれ死んだこと



エース隊長はその間、一言も発することなくただあたしの言葉に耳を傾けていた





ギシッ




「!!?」




そして話し終えて暫くの沈黙のあと、徐にベッドから立ち上がったエース隊長は数歩歩くとピタリと立ち止まった


あたしはエース隊長が呆れていると思って慌てて口を開いた





「あ、あの・・・おかしいですよね、こんなの。タイムスリップなんかするわけないって、あたしも思ってるんです・・・だけど、だけど、あたしにはどうしてもあの1週間が夢だとは思えなくて・・・」




必死に説明しようにもうまい言葉が見つからず、だけどエース隊長にだけは信じてもらいたくて必死に言葉を紡ぐ






「夢なんて・・・言わせるかよ」


「え?」







どうしたら信じてもらえるか必死に考えていると、ポツリ呟かれたエース隊長の声に、あたしはバッと顔を上げた

エース隊長はいつの間にかこちらを向いていて、眉間に皺を寄せ、片手で口元を押さえている



え?何?









「やっと思い出したのかよ」


「え?やっとって・・・」










またポツリ呟くエース隊長の言葉の意味が分からなくて、あたしはキョトンと目を丸めて首を傾げてしまった


すると、エース隊長は口元を押さえていた手を頭に持っていくとガシガシとその髪をかき乱した










「流れ星に3回願いを唱えると願いが叶うんだよな?」

「え?」

「洗濯、出来るようになったし」

「せん、たく?」

「野菜も食えるようになった」

「はぁ・・・」

「無茶な戦いは…する時もあるけど、死んでねぇ」

「…?」


ポツリ、ポツリ呟き近づいてくるエース隊長に、あたしは訳が分からず首を捻る








「強くなって、海に出て・・・海賊になった」

「・・・エース、隊長?」











ピタリ、あたしの前で足を止めるエース隊長の顔を見上げて見れば、エース隊長は「まだわかんねぇの?」って言って不機嫌な顔になる


あたしはまだ意味が理解できなくて、首をかしげた


そしたら、はぁって盛大にため息をついた後、エース隊長は屈んであたしに視線を合わせた










「この海で待ってるって、お前が言ったんだぜ?」


「!!?」













そう言って照れくさそうに笑うエース隊長に、あたしは大きく目を見開いた



うそ・・・そんな、まさか・・・











「エー・・・ス?」



「・・・っ、遅ぇよ・・・バーカ」











「どんだけ待ったと思ってんだ」そう言って泣きそうな笑み浮かべてから、エース隊長はあたしを力強く抱きしめた


あたしは驚いて、パニック寸前の頭を何とか整理して、そしてエース隊長の背に腕を回し、ゆっくり呟いた












「本当に、あの・・・エースなの?」


「あぁ」














確かめるように呟けば、エース隊長は少し体を離し、あたしの目を真っ直ぐ見据え、懐かしむように目を細め頷いた




それを見たら、一気に色んなものが込み上げてきた




「何泣いてんだよ」

「・・・っ、だって・・・そんな、嘘・・・」

「嘘であってたまるか!」



「俺はずっとお前が思い出すの待ってたんだ」と続けて、エース隊長はまたあたしを抱きしめた


そしたら、本当に本当なんだって、あのタイムスリップした時に出会ったエースが今目の前にいるエース隊長なんだって、一気に実感が沸いて、あたしは縋るようにエース隊長にしがみ付いた


「信じられない!あたし達、だって・・・ずっと前に、会ってる・・・」

「本当だよな。お前、初めて会ったとき全然俺のこと覚えてねぇんだもん」


「自分で待ってるとか言ってたくせに」と呟き、すこし不機嫌そうに声をだすエース隊長



そうだ、確かにあたしあのときエース隊長に聞かれた


『俺のこと知ってるか?』って



そっか、エース隊長はもう、あの時すでにあたしがあの時のあたしだって分かってて、それで声をかけてくれたんだ

「お前が全く覚えてねぇから、俺も意地になって言ってやんなかった」

「ご、ごめんなさい・・・あたし、どうしよ・・・」



「絶対許さねぇ!」


「え?!」




仕方がないとはいえ、自分の不甲斐なさにアワアワと戸惑っていると、エース隊長の拗ねたような声


あたしはその言葉に焦る


「エース隊長、あの、でも、あたし・・・」




















「だからもう、一生俺の傍から離れんなよ」






















何か言おうと言葉を詰まらせてるあたしの耳に届いたのは、エース隊長の照れくさそうな声



あたしはピタリと動きを止めた











「え、それって・・・」













言われた言葉に目を見開き、エース隊長の顔を覗きこむと、そこには照れ臭そうなエース隊長の笑顔があった














「お前が言ったんだぞ?次に会った時は、ずっと一緒にいるって」


「あ、そういえば・・・」



最後に別れるとき、確かにあたしはエースにそう言った


本気だったよ、だって次にあったらあたしはエース隊長が大好きになって、この人に一生ついていくって思うんだから


だけど、まさかこんな形でまた会うなんて思っても見なかった



「今思うと、あんときのミユって逞しかったよなぁ」

「だ、だってエース隊長もルフィも危ないことばっかりするし、あたしが何とかしなきゃって思って・・・」


あの頃を思い出しているのか、喉を鳴らして笑うエース隊長に、あたしは何だか恥ずかしくなる

確かに今ではエース隊長を守ったり助けたりすることはないし、むしろ助けられたりばっかだけど…








「すっげー嬉しかった」















そんなことを思いながら口を尖らせていると、不意にエース隊長の笑いが止み、代わりに聞こえる声とコツンと額同士がぶつかる感触に、あたしはその言葉にも、至近距離に見えるエース隊長にも目を丸める







「ミユが俺の前に現れてくれたこと、教えてもらったこと、くれた言葉・・・全部が、すっげー嬉しかった!」


「っ」





ニコッと笑うエース隊長の笑顔は本当に嬉しそうで、あたしは瞬時に頬が染まるのが分かった




「ミユが死んだとき、ミユの体が消えたんだ。だから俺、ミユは死んだんじゃない、またいつか会えるって言葉を信じて生きていこうって決めた」

「エース隊長・・・」




「そんで、次は絶対離れないって誓ったんだ!」











「俺自身に」


そう続け、エース隊長はまた笑みを作った










あたしはその言葉と笑みに、涙が溢れ出た















「あの時は守ってくれて、ありがとう」





そんなあたしの涙を指で拭いつつ、エース隊長はポツリ呟く


そして顔を上げたあたしに、エース隊長はゆっくり近づいた



















そして触れる温もり

























「今度は、俺が守る番だ!」



































触れた唇に戸惑いながらも、あたしはエース隊長の言葉が嬉しくて、大きく頷いて満面の笑みを浮かべた























ずっとずっと心に秘めた想い


時を超えて繋がったその想いは













永久に結ばれる











end

→オマケ
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ