時を超えて

□*出逢*
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「でもよー、ミユらしいっちゃらしいよなー」

「確かに」


それはあたしの快気祝いの初日の出来事だった


快気祝いだって言うのに、皆は飲めや飲めやとあたしに酒を注ぎ、一体何があったのかと問い詰められる(軽く尋問!)

別に隠すこともないし、お酒で気分も良くて、しかもエース隊長とキ、キスまでしちゃったあたしは浮かれて今までのことを皆にベラベラ喋った(皆酔ってるから明日には忘れているだろう)

そしたら「そんなこともあるんだな」、からの冒頭のセリフ

あたしはキョトンとしながらその同僚でもある2番隊の隊員を見た


「だってよ、ミユ自身は全くの初対面であるエース隊長にヒョイヒョイ付いていったんだろ?」

「ヒョイヒョイって…」

「危機感がねぇっつーか、人を疑うことを知らないっつーか」

「単純?」

「てか、ただのバカ?」

「だな」


「待てこら!」


黙って聞いてりゃ何なのよー!いくらなんでもただのバカ呼ばわりされたら、例えバカなあたしだって怒るんだからね!

あれ?バカって認めちゃった?


「おい、アホ」

「馬鹿の次はアホ!」


バカバカ言ってゲラゲラ笑ってくる皆にあたしがムキになって抗議していれば、背後から聞こえる声にあたしは勢いのまま振り返る

何よーバカとかアホとか皆言いすぎなんだよー!あたしだって少しはいいとこあるんだから!(すぐには思い浮かばないけど)



そんなことを考えながら振り返った先の人物を目に捉えれば、あたしは思わず固まってしまった



「あ…エース隊長」

「よっ」


そこには片手にコップを持って、もう片方の手を軽く上げ、あたしを見て面白そうに笑っているエース隊長がいた

エース隊長の登場に驚きつつも喜んで飛びつこうとしたが、ふと先ほどの出来事が脳裏を過ぎる



『次は俺が守る番だ!』



そう言われて触れた唇





「…っ!!」

思い出した瞬間、あたしの顔は一気に発火した(エース隊長じゃないのに!)

そして勢い良くエース隊長から顔を逸らすと、発火した顔を覆ってどうしたものかと慌てふためく

ど、どうしようどうしようどうしよう!恥ずかしすぎて顔を直視できない!てか、何で今更そこピンポイントで思い出すかな!

一人パニックを起こしながら中々鎮火しない顔を必死で抑える




ガシッ



「その態度は何だ?」

「な、ななな、何でもありません!」

そんなあたしの心情など知る由も無く、エース隊長はあたしの肩に腕を回すと、耳元に顔を寄せて問い詰めてくる

いやー!エース隊長の声が近すぎて余計に思考回路がぶっ飛ぶんですけど!


「…どもりすぎだ、何考えてた、言ってみろ」

「なな、何も!エース隊長とキスした時のこと思い出してエース隊長を見るのが恥ずかしくなったわけじゃありませ…んぐ!」

「な、おまっ…!」

もうパニック状態のあたしは何が何だか分からず早口で言えば、エース隊長がギョッとしたように目を丸めあたしの口を思いっきりその手で塞いだ

あたしは突然口を塞がれ驚くが、それよりも驚いたのが目の前のエース隊長の顔


「お前ら何見てやがる!」

「あ、いや…」

「や、やること早いな、エース隊長」

「何か言ったか、そこ」

「何でもありません!」


目の前のエース隊長の顔は真っ赤で、すぐにあたしから視線を外すといつの間にか皆の注目の的になっていたため、こちらを見るクルー達に睨みを効かせるエース隊長

「散れ!」と言って真っ赤な顔のまま皆を蹴散らすエース隊長を見て、あたしは未だに熱い頬に手を添えながら空を見上げた







「別に、ヒョイヒョイ付いていったわけじゃないんだけどな」







見上げれば満天の星空が広がっていて、あたしは独り言のように呟いて、エース隊長と初めて出会ったときのことを思い出した














時を超えて*出逢い編*
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