短編夢
□ただ愛の意味が知りたくて
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ただ
知りたかっただけ
ただ愛の意味が知りたくて
「愛してる」
真っ青な空を見上げながらそう呟いたあたしに、隣で鍛練をしていたゾロはダンベルを静止させこちらに顔を向けた
「何だ…急に」
少しの静寂の後、再び動きだしたダンベルの音と共に聞こえてきた不思議そうなゾロの問い掛けに、あたしは視線を空から外しゾロに向けた
「愛してるって、どういうことを言うんだろうね?」
「…さぁな」
顔をゾロに向けたまま体操座りしていた膝に頬を乗せて、本当に何となく思ったことを聞いてみれば、ゾロは相変わらずダンベルを動かしたまま一瞬眉間に皺を寄せそれだけ言った
「あたし、ゾロのこと大好きだけど・・・それ以上に愛してるって言葉があるでしょ?」
「何が言いたい?」
「あたしはゾロを愛したいの」
「…は?」
「だけど愛することがどういうことか分からない」と自信なさげに続ければ、ゾロは本当に驚いた顔でこちらを見て、それからすぐにダンベルを床におろすと身体ごとこちらに向き直った
あたしは何事かと膝から頬を離し顔を上げる
「俺はお前が好きだ」
「え?」
少し考え込んだ後、滅多に言わないようなことを口にするゾロにあたしは思わず声を上げてしまった
だけどその表情はいたって真剣で、あたしの胸は小さく高鳴る
「まぁ、俺もその…なんだ…愛、するってのがどんなのかいまいちわかんねぇ」
「…」
しどろもどろだが、慣れない言葉を使って懸命に話すゾロに、あたしは真剣に耳を傾ける
するとゾロは照れくさそうに頭をバリバリ掻き毟るとあたしの目を真っすぐ見据えた
「だけどな、俺のお前に対する今の想いが、愛してるって想いに負けるなんて思っちゃいねぇ」
「むしろ勝ってる」となぜか自信満々に続けるゾロにあたしは目を丸め、そしてその意味を理解し、すごいことを言われた気がしてほんのり頬が熱くなる
「だからその意味をわざわざ知る必要はねぇ」
「…でも」
しかし、次に出たゾロの言葉に多少の不安が残る
愛してるより勝る想いでも、やっぱり愛してるは好きとは違う何か特別なものを感じるから、ゾロにそれを考えることを放棄してほしくなかった
そう思ったら自然と眉尻が下がり手に力が籠もった
「だが、お前がどうしてもその意味を知りたいつーなら…」
「え?」
何だか悲しくなってグッと唇をかみ締めていると、ゾロの大きな手があたしの頬に添えられたかと思えば、自然と俯いていた顔を上げさせられ絡まる視線
あたしの泣きそうな顔を見て、ゾロは困ったように笑って言葉を続けた
「俺と一生かけてその意味を見つけ出せば良いだろ?」
そう言って、ゾロは普段は見せないような笑みを浮かべた
あたしはまさかそんなこと言われるとは思っていなくて、だけどそれは愛してるなんかより嬉しい言葉だったかもしれない
そう思ったら途端に頬が緩んだ
「うん…ありがとう、ゾロ」
そしてその言葉の意味を理解した瞬間、さっきまでの不安は一気にどこかへ吹っ飛び、代わりに胸に広がる温かいもの
あたしは溢れる涙をそのままにゾロに笑顔を向けた
「泣くか笑うかどっちかにしろよ」
「へへっ…だってゾロの言葉が嬉しくて」
呆れたように笑いながらも、優しく頬を伝う涙を拭ってくれるゾロの温かい指がたまらなく幸せを感じさせてくれた
「大好きだよ、ゾロ」
「あぁ、俺も」
「好きだ」
そうゾロが呟いてすぐ、唇に落ちた温もりに、一生この人と一緒にいられるなら、愛することがどんなものなのか知らなくてもいいかなって思ってしまったのはあたしだけの秘密
end
*あとがき*
企画『LOVE!』さま提出夢でした!
しつこく3回目の投稿です←
ゾロって甘い雰囲気出すの難しいなぁ(死
もっと精進します(。-∀-)
20101125