リクエスト作品

□一瞬の躊躇、永遠の束縛
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撮影ですっかり遅くなった夜だった。

現場の駅から用意された車に乗り込む、その僅かな間で俺は見つけてしまった。


どんな人込みでも、進を見つけるのは簡単なことだった。
進の持つ雰囲気は特別だ。存在が輝いてみえる。
こんなこと言うと笑われそうだけど、でも、本当にそうなんだ。

だから、俺はその日も進が分かった。
その隣にいる阿含の姿も。

進は笑っていた。
阿含も口角を上げ、おかしそうにしている。
まるで二人の間に何の隔たりもないかのように。


それを見た瞬間、俺は裏切られたと思った。



携帯を手にする。
「あ、進。俺、桜庭です。今、なにしてるの?……ふーん。じゃ、これから進の家行くから」
有無をいわさず電話を切った。

珍しく焦った声をしていた。
――いい気味だ。


「桜庭ちゃーん。どっか寄るの?」
「いえ、僕の家にお願いします」
芸能関係の人間をプライベートに入れる気はない。
進の家を知られるなんて、以ての外だ。

車が動き出す。

進が早いか、僕が早いか、微妙なところだった。
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