ES21

□禁煙宣言
2ページ/2ページ

「なんだ、これは」
咎めるように、ベッドの上を睨む進。

視線の先には、灰皿と消された煙草がある。

――ヤベッ!
教師や雲水に咎められても痛くも痒くもない阿含が、惚れた弱みか、進に見られたことには動揺している。

「ダチが吸ってんだよ」
あまつさえ、しなくてもいい言い訳までしてしまう。

無言で進は灰皿に手をかざす。

「まだ暖かい」
時代劇ですか?


「阿含、煙草を吸っているのか?」
「…わりーかよ」
「…」
進はそれを無視して、左右を見渡した。
やがて目的の物を認めて、手を伸ばす。

ジッポのライターだ。
そして、灰皿にあった長めの煙草も拾う。

――シュボッ!


「なっ!」
阿含は慌てて進の口からそれを取りあげた。
灰皿に火の点いた煙草を押しつけ、ライターも奪う。

慌てる阿含を嘲笑うように、進がゆっくり紫煙を吐き出した。

「分かってんのか!ヤニ吸うと肺がイカれて、アメフトに支障出んだぞ!
依存性だってあるし、それ以前におめぇは未成年だろがっ!
何考えてやがる」

「…喫煙が悪いのはわかっているのだな」
進の行動が自分を咎める布石であったことに気付き、阿含が憮然とする。

「俺はお前ほど自分本位な人間を知らん」
「…褒め言葉じゃねぇな。それ」
「自分が可愛いなら、煙草は今すぐ止めろ」
なかなか変わった説得である。
相変わらず、天の邪鬼な阿含の心をストライクでついてくる。


「ナニ、心配でもしてくれちゃってるわけ?」
のしかかってくる阿含を迷惑そうに払って、しかし後ろを向いたまま呟く。

「お前の心配などする義理はないが…何かあれば、お前の才は惜しむだろうな」

案外、彼の予想の外をいくところが気に入っているのかもしれない。


「俺、禁煙するわ。こんなこと続いたら、先にお前が肺ガンになりそうだしな」
「ぬかせ」



◆◆◆
天才と変人は紙一重。
阿含と進は変人同士、馬が合えばいいと思います。

阿含→退屈しないから好き。
進→なんとなく気になった。
と、お互い噛み合ってなさそうですが。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ