最終幻想4 連作小説(ED後)

□あしおと
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慌てて転びそうな足音が、執務室に近付いてくる。
セシルが顔を上げると、顔を紅潮させた枢機卿が肩で息をしながら扉を開けたところだった。

彼はオーディン王の頃から重職を続投した数少ない一人であり、子供の頃からセシルを知っている人物だ。
政敵の多いセシルにとって、まず信頼できる味方といえる。


「陛下!王の間へっ、王の間へ起こし下さい!」

何があった、とセシルが慌てて席を立つ。
今の時間は、王妃であるローザの謁見時間だ。



王の間に入ると、ローザが自分にタックルしてきた。

尋常ならざる様子で号泣してくる。


「セシルっ!遅い」
「ごめん。何があった?」

ローザは封筒を差し出した。
封はまだ切られていない。

不審に思って差出人を見て、セシルは腰が抜けそうになった。
――信じられない。
封筒を持つ手が震えている。



「僕が来るまで待っててくれたの?」
ローザが無言で頷く。

「一緒に見たいから。それに、嬉しくて、字が本人かまともに確認できない…」

それはセシルも一緒だった。
でも、彼の――カイン・ハイウィンドと書いてある。


それでも開けようとしたセシルに枢機卿が待ったをかける。
「毒物が入っているかも知れませんので、私が開けましょう」
――いたずらなら、万死に値しますな。
ちらりと字を確認して、枢機卿は開封した。


「?」
枢機卿は一瞬眉を寄せる。
中に便箋が入っていなかったからだ。
中を覗き込み、薄いメモ用紙を引っ張り出す。

そこに書かれた文字を見て、彼は苦笑した。
彼はカインのことも、子供の頃から知っている。
「間違いなく、本人ですな」

それを聞くなり、ローザがメモをひったくった。



親愛なる ハーウ゛ィー夫妻へ

葬式は必要ない。
そのうちバロンに寄ると思う。
心配は無用。



そのときバロン城から尋常ならざる雄叫びが上がったという。
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