最終幻想4 連作小説(ED後)

□適性審査
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トロイアから帰ってきた枢機卿が,自室にカインを呼んだ。


「今のバロンに何が必要か」
そう問われて,カインはこう答えた。

「バロン内部…特に軍部と貴族会に顔が利く人間」
そう事務的に答えてしまった。

セシルだったら,人々の希望とか,そういうことを言いそうだ。


「もう少し,深く考えてくれないか?」
諭すように,枢機卿が言う。
しかし、彼の意図が読めないほど,カインは馬鹿ではない。

「軍部と貴族会が手を組んで,王権を脅かしたら拙いって?それはあんたが現場を知らないからさ」
言いたかったことを当てられて,枢機卿が見直したようにカインを見た。

「使えない貴族のボーヤをいやいや預かってる軍部が貴族会と手を組むと思うか?軍部は事を起こすとしても単独でやるだろうよ。
なぜなら,貴族の人間がどこかお気楽で,詰めが甘いのを身をもって知ってるからな。
そんな奴らを仲間にしたら,士気が鈍るだけだ」

「君は1年半で随分成長したようだ」
「そりゃどうも。で,俺は何点だ?」
もともとカインはパワーゲームが得意だ。そうでなければ,竜騎士隊が今まで存続しているはずがない。
前王が空軍主力を飛空挺団に移し,竜騎士隊を解体しようとしていたからだ。


カインが補佐役として使えるか,枢機卿はそれを今の会話で見定めようとしていた。
果たして今の答えはどれくらいの評価が得られるのだろうか。


「85点ってとこかな」
「ふーん。後学のために100点満点の答えを教えてくれない?」
肩を竦めて,カインは枢機卿を見つめた。

「今のバロンに必要なのは,軍部の圧倒的支持があり,貴族会と渡り合える知力があり,何より王を絶対裏切らない人間だ。たとえばカイン・ハイウィンドのようにね」

「自分の名前を出せるほど,俺は図々しくないぜ?」
「それくらい厚顔になれて,100点さ」
くっくっ,と枢機卿は笑った。
捨ててこなかったカインの若さが好ましくて,笑ったようだ。

カイン自身が自分の重要性をどのくらい評価しているかは謎だが,彼はなかなか得難い人材として枢機卿は目を付けていた。
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