最終幻想4 連作小説(ED後)

□あしおと
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足音というのは残酷なものだ。
一瞬の期待の後、深い失望感を味わう。

重い鎧を装備しているにもかかわらず、重力から開放されたように軽やかな足音。
竜騎士独特のものだ。

扉を開けて姿を確認したくなる衝動をセシルは堪えた。
――どうせカインではない。

執務室に溜め息と筆記の音が響く。


薄情者、とセシルは心の中で呻いた。

バロンを立て直すと言った時、お前は笑ったじゃないか。
それを“イエス”と勘違いした、僕が悪いと言いたいの?

死んだ人間をいつまでも待つ王を、貴族たちが愚かと笑っているのを知っている。
――あいつらは何も分かっちゃいない。
あの月の遺跡で生き残ったのに、どうして死んだと思えるだろう。



セシルはいつも後悔している。
いなくなったと知った瞬間、もっと必死で探せばよかった。
――すぐ戻ってくる、なんて妙な期待しないで。
分かった気にならないで、もっとカインの声を聞くべきだった。
――苦しめているなんて思いもしなかった、馬鹿な自分。



もう、自分を側で支えてくれなどと贅沢なことを言う気はない。
生きていてくれれば、それでよかった。

たとえ自分に会ってくれなくても、カインという存在があるだけで、自分は今より何倍も強くなれる。


たまに城内のカインの部屋に行く。ミスト出立のあの日から、変わっていない。
――遺品のように置かれた、ホーリーランスとドラゴンメイル以外は。

カインはまるで分かっていたかのように、月の遺跡で装備していた武具は持っていかなかった。
ホーリーランスが主の不在を嘆くように、月の光が反射した。


ローザとの間にはまだ子はいない。
従兄だけあって、二人は似ている。
カインの“生れ変わり”のような子供ができたら、僕はきっと諦めて泣いてしまう。

その気持ちをローザも理解できると言った。
それぐらい二人の時間は止まってしまったというのに…。
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