ES21

□好きと言えたら・おまけ(進若)
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好きと言えたら・おまけ

――少しだけ期待してしまった。

その感情は、静かに俺を蝕んだ。
できれば知らないままでいたかった。
知ってしまえば、もう知らない自分に戻れない…。

「私、先輩のこと…」
真っ赤になって押し黙る若菜に、自分は確かに期待したのだ。
翻って考えれば、それは自分が若菜に好意を持っていることの証左だった。


若菜は俺のように気の利かない奴にでも、笑ってくれた。
アメフトしか能のない自分を、肯定してくれた。
それがマネージャーの義務の一環だったとしても、嬉しかった。
好意を持つきっかけなど、外から聞けば些細なものでしかない。

振り返って欲しいわけではない。
馬鹿騒ぎしているチームメイトの世話を笑ってしてくれる、そんな彼女がいいのだから。


「えっとですね、今まで堅い話ばかりしてましたので、次の質問はずばり『好きな人のタイプは?』です!」
前であればその質問の答えは、特にない、だっただろう。
――今は。

「チームの一員として誇りを持って働けることです」

「進…それマネージャーの条件じゃん…」
「そうだが、それがどうかしたか?」
俺が好きなのは若菜で、若菜はマネージャーだ。
返事に、何も問題はないはずだった。
(終わり)

◆◆◆
私がおや?と勘ぐった台詞。
 

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