ES21

□料理の鉄人?(ナーガと進)
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料理の鉄人?


「悪いわね。行って来るわね」
事態はその一言から進展した。


「阿含。一週間、食事当番は分担だからな」
雲水はだるそうに欠伸をする弟に向かって、ピシャリと言い放った。
「あ゛あー?」
得意のガンも、慣れてしまっている雲水には通用しない。
「結婚記念に海外旅行を贈るといって、反対しなかったろ?掃除洗濯は俺がするから、食事くらいはお前も手伝え!」
そう、孝行息子の雲水君は、両親に七泊八日の海外旅行をプレゼントした。
阿含もそれに反対しなかった。
――単に、ウザいやつがいなくなる、と思って了承したにすぎなかったが。

阿含いわくのウザい両親は、けれども衣食住全てを整えてくれるありがたい存在だった。
そのことに阿含はおくればせながら気付いたのだった。

「外食すりゃいいじゃん」
「お前がそれでいいなら、そうするが?」
阿含は大抵の外食が嫌いだった。
不味い店にあたると腹が立つし、味が単調で美味いと感じないのだ。
一日二日なら我慢できても、一週間外食はキツい。

「チッ!」
諦めたように舌打ちする阿含を、雲水は安堵して眺めた。
実を言えば、もっとごねられるかと思ったのだ。
最悪、自分一人で料理する覚悟もしていたのだが、それを言うと阿含が図に乗るので、言う気はない。

「朝と弁当は俺が作る。夕飯は頼んだからな」
「わぁったよ!」
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