ES21

□英雄に憧れ…
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英雄に憧れ…

「よぉーし、三十分休憩だ!」
ショーグンの声が、グラウンド全体に響き渡る。

その内容に、ホワイトナイツ一同、張り詰めていた力をどっと抜いた。

通常の基礎練のあと、徐々に密度が増す攻撃練習。

密かに、王城戦術の革命とまで嘯かれる“バリスタ”。
これを、秋大会までに、何がなんでも仕上げなければならない。
勿論、バリスタなしの通常攻撃も完璧にした上で、だ。


「…うへぇ」
夏の茹だる暑さに辟易として、犬のように舌を出していると、背後から背中を叩かれた。

「桜庭。いくらファンの子がいないからって、気ぃ抜きすぎ」
「高見さん…」
振り向けば、信頼する高見さんがドリンクを両手に持って立っていた。

先輩にドリンクを持って越させてしまったことに恐縮しながら、差し出されたポカリをありがたく受けとる。

「キャッチミス、今日ないよ。調子いいね」
「いや、前が酷かっただけですよ…。王城のレギュラー張ってるんだから、そのくらい当たり前になりたいです」
「いい心構えだ」
最近、こうやって高見さんと話す機会が増えた。
確実に、攻撃の目玉、エベレストパスのおかげだろう。
前は休憩時間中、進と話すことが多かったけど、最近(というか春大会終了後)から付き合いが悪くなっていった。

「…やっぱり進はすごいですよね」
守備練で全力疾走した後で臨む、バリスタ練習。
それでも普段と変わらぬスピードとパワーでラインマンを何人もかちあげ中央突破を図っていた。

もっと早くから、両面にしていればよかったんじゃないか?と思えるくらい、凄まじいスタミナを見せつけてくれている。
――俺なんか、攻撃練習だけでへろへろなのにさ。

「太田原さんが浮くなんて、ありえないですよ。普通」
「味方にすれば、あれほど頼もしい奴もいないけどな。
そういえば、本業の方も何か色々試してるんだって?」
「へぇ…あのスピアタックルがもっと強力になったら、俺、練習とはいえ食らいたくないですよ」
「同感」

ハハ、と笑い合っていると、
『あと五分でーす!』
と若菜が声を張り上げているのに気付いた。

「ちょっとトイレ」
「あ、俺も」
そんなタイミングまであってしまった。
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