ES21

□学生の本分
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王城駅から少し離れたところにあるファーストフード店は、いつもと同じように客が疎らだ。
一階でセットを購入した後、喫煙席のある二階を避けて、三階へ上る。
そして、俺は問題集を広げた。


王城は進学校故に、校内模試が多い。
春の関東大会迫るこの時期、テストなんてしている場合ではないのだが…赤点を取ったら補習でもっと練習時間削られる。
せっかく骨折が治ったというのに、アメフトできないなんて、冗談じゃない。


それで、練習帰りに進を伴って勉強会というわけだ。

ちなみに大田原さんはスポーツ特待生なので、試験免除だそうだ。
羨ましい。



「桜庭、そこ違う」
俺が解いているのを見ながら、進が指摘する。
その声は騒がしい店内でも、よく通る。

進は試験前に慌てるタイプじゃないから(それ以前に、成績も雲泥の差だし)、主に欠席した授業を教えてもらっている。

ポイントを押さえているのか、進は先生としても優秀だ。
苦手な数学も、何とか理解。

「次、世界史よろしく」
「暗記しろ」
以上。
身も蓋もない。

「今から全部暗記なんて絶対無理!」
泣き言を言うと、しょうがないな、という顔で進は付箋を取り出した。
教科書にペタペタと貼り付けていく。

「付箋貼ったところだけでも最低暗記しろ」

地獄に仏。
自分で顔が弛んでいるのが分かる。

「やった!進のヤマ当たるんだよねー」
「授業に出ていれば、誰でも分かる。ヤマというほどではない」
この出題予測が明日中にアメフト部二年全員に回ることになるのを、進はたぶん知らない。
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