ES21

□奥義伝承※
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「甲斐谷」
夕食後、部屋に戻ろうとした陸を堅い口調で呼び止めた人がいる。

寡黙が過ぎて、話しかけられた瞬間、体が緊張するその人こそは…。
「…進さん。何か?」
孤高の努力家・進清十郎。

見下ろされているせいなのか、独特の威圧感があるからなのか、普段強気な陸も彼には気圧される。

――何考えてるのか、分からないし…。



「以前ロデオドライブの走法を訊いたことがあっただろう。その礼をしたい。何か欲しい物や望むことはあるか?」
この人はいつでも唐突だなと思いながら、辞退するほど殊勝でもない陸は考え込む。

せっかく何でもいいと言っているのだから、金で買える物を望むのは賢くない。
やはりアメフト関連だろうか。
ロデオドライブに匹敵する奥義となると…。

「じゃあ、スピアタックルの奥義を教えてください」
力技と思われているスピアだけれど、だとすればベンチプレス140kg(単純計算で片手70kg)の進が70kg以上のランナーを余裕で吹っ飛ばすのはおかしい。
とすれば、力以外にも何かコツがあるはず。
それを自分なりに消化できれば、ロデオドライブにさらなる破壊力が加わるかもしれない。
そう打算してのことだった。



「む、スピア(片手タックル)の方法か…。これといったことはしていないが、出来るようになったのは、ベンチ100、握力120くらいのときだったか…」
「あ、握力120!?」
「そうだ。押しても止まらなそうな相手は、横手から深く挿して脇腹辺りを“掴む”」
肋骨砕きの原因判明。
それから、餓王だって破壊しないストップウォッチや自販機を、進がああも容易く破壊出来るのかも。

握力(指の力)だ!


「進さん、ちなみに今握力どのくらいですか?」
「左右ともに200kgくらいだ」
そりゃ、指一本で、セナ倒せるはずだって…。



トボトボと廊下を歩く陸。
今日得た知識といえば、スピアが思った以上に力技だったことと、進が意外に長嶋茂雄ということだけだった。

「バッと来たのに気付いたら、ビッと走って、ガッと掴むじゃ分からないよ…進さん」


◆◆◆
進のあれは、腕の力より指の力が異常だろうと思うのです。

えぇ、倒立指立て伏せを見た時から。

個人的には正面からザクッ!より、三閣パンクスみたいに横手から脇腹鷲掴みの方が痛そう…。


因みにハンマー投げの室伏選手が握力140kgくらいだそうです。

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