Brotherhood☆ミ

□愛おしい
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大学の入学式と共に朝瑞も陽多も忙しくなった。陽多は公園でのライブを成功させて、朝瑞も一緒になって盛り上がった。とても楽しい入学式の日だった。陽多たちはテレビにバンバン出ていた。個々の活動もして、どんどん連絡が取りにくくなった。朝瑞はテストやらオープンキャンパススタッフやら定期発表やらでテレビを見ている時間すらなかった。電話をしてもお互い出れず、ラインをしても返事を返すのは翌日になってしまう勢いだ。

「朝瑞ぃ?今日は何ぃー?」

階段を勢いよく降りて来て朝瑞は机の上にあったパンを加えた。

「あとでスケ確認するから大丈夫!毎朝毎朝聞かなくても!」

朝瑞はそう言って家を出て行った。母も急いで外に出て…

「朝瑞ぃー!今日何時に帰って来るのー?」

「多分また終電!」

手を大きく振り、そのままバスに乗った。バスはかなりの満員だった。奥まで行けそうもなかったので、すぐそばにあったてすりに掴まった。鞄からスケジュール帳を出して今日の日程を確認していると…耳元で誰かが言った。

「朝瑞ちゃんの日曜日の予定は…空いてるな」

「え?」

びっくりして振り返ると帽子にメガネをかけた想真が立っていた。

「そっ想!」

「しっ!!!」

「あ、ごめんなさい…」

長い人差し指をたてて小声で言った。

「なんでアイツと幼馴染なのに自覚ねーの?」

「いや…あんまりそう実感したことってないから…ってなんでバスに!?」

「あぁ…俺だけ個々であっちがテレビだからだろうな!」

「え?何やるんですか?」

想真は徐にチケットを渡して来た。

「舞台!じゃなっ!」

「え!?あ…はい!」

たまに言える『バイバイ』やたまに言えなくなる『じゃーね』はいつまでも克服できない気がした。想真から渡されたのは白い封筒だった。バスを降りて行った想真は一体どこへ向かっているのだろう。白いヘットホンをかけて歩く彼と目が合った。軽く手を振られたので開いた手で振り返した。
降りるバス停に着いてからはぐ実を待つことにした。白い封筒を開けて中身を見ると…舞台のチケットとアドレスと携帯番号、ラインのIDが書かれていた。

「え…登録してなかったっけ?」

そう思い調べてみると…なかった。紙を見ながら登録をして、ラインを送った。アドレス、電話番号をつけて…。
するとすぐに返事が来た。

想真「ありがと。」

朝瑞「いいえ」

想真「舞台来いよ?折角渡したんだから」

朝瑞「はい…予定入らなかったら…」

想真「スケには書いてなかった」

朝瑞「そうですけど!大学が急に入ることもあるんです!!!」

想真「へー。」

朝瑞「へーってなんですか!?」

そう送ったが…想真から返ってこなかった。きっとリハとか始まったのだろう。そう思っているとタクシーが目の前に止まりはぐ実が出て来て、奥の席には翔琉さんがいた。

「朝瑞!お待たせ!」

「ううん!待ってないよ!翔琉さん!おはようございます!」

「あぁ!おはよう!じゃなっ、はぐ!」

「うん!いってらっしゃーい!」

翔琉ははぐ実に手を振り、そのままタクシーは出発した。

「朝瑞!あれ?それ何ぃ?」

ホワホワしているはぐ実が朝瑞の白い封筒を見て言った。

「うん…想真さんから…チケットもらった!」

「チケット?なんの?」

「舞台って言ってた!」

2人でチケットをちゃんと確認すると…はぐ実が興奮気味に言った。

「あぁ!これ、すっごいキャストでチケ取れにくいって話のチケじゃん!すごっ!!!」

「そうなの!?全然知らなかった…」

「そっち目指してんでしょ!?わかっておきなよ!」

「そうなんだろうけどさ…」

-チケの値段をスマフォで検索をかけると…チケット1枚1万3千円した。出演者も想真の他には大御所ばかりだった。その中で想真は主役だ。

なんだ…このキャスト!?

そう思っているとはぐ実が抱き着いて来た。

「朝瑞!次、スタジオ貸し切って声優するってー!」

「え?あ、そうなんだ」

「何?そのノリ!?嬉しくないの!?」

「ううん!そんなことはないけど、チケが物凄く高くて…」

「別に気にすることなくない?自分で買ったわけでもないだろうし!」

「え?そうなの?」

「家族用とかってもらえるらしいよ!だから気にすることないって!行ってきなよ!」

「うーん。でもさ…ねぇはぐ実!一緒に来てくれない?」

そう言うとはぐ実は嬉しそうに笑った。

「いいの!?行く!行きたい!」

と言って来た。はぐ実が来てくれるなら大丈夫だろうと思えた。
その日の大学終り、地元駅に着くと陽多から電話が来ていた。久しぶりの連絡だったので電話をしようとすると…

「げっ!!!充電ないじゃん!!!早く帰んないとっ!!!」

そう言い帰ろうとすると目の前に充電器が現れた。

「え!?」

「使う?」

びっくりして振り返ると想真がいた。

「え?なんでいる…」

「あぁ、俺引っ越してきたの!ここ」

「え?そっそうなんですか?」

「あぁ!」

「なんで…?」

「なんでって…元々いたとこから事務所遠かったし、事務所から近くてライブ会場や大手の舞台ステージとかが近辺にある駅がここだからだろ」

「あ…そうですか」

「あぁ?ほらっ充電器」

「あ、ありがとうございます!」

そう言って充電器をはめた。

「じゃ、貸している間、付き合ってもらってもいいか?」

「え?あ、はい!もちろん!」

想真そう言いなんだかご機嫌そうだった。そのまま想真の後に着いて行くと…カラオケに着いた。

カッカラオケするの!?

ビクビクしていると…

「おい!何してんの?」

「え?入るの?」

「…大丈夫。お前の音痴なんて聴きたかねーから」

そう言いながら彼は入って行くのでムッとしながら追いかけた。
彼は受付に行き朝瑞に手を伸ばして来た。

「なっなんですか?」

「ここの会員じゃねの?」

「あ、持ってますけど」

「早く出せよ」

「はいはい!」

カードを出すとスタッフが色々書き始めた。男性スタッフの後ろにいる女性スタッフ2人がこっちを見てソワソワしている。

「あの…想真さんですよね?この辺に住んでいるんですか?」

「どちらに住んでいるんですか?」

わー凄いこと聞いてる。陽多だったら笑顔で返すんだろうな…

「…」

「あの…」

「なんですか?」

「握手してもらっても…」

女性が手を出すと…彼は鼻で笑った。

「質問していいですか?」

「え?」

「たとえば、知らない男がいきなり住んでいるとことか握手してくださいとか言って来たら…気持ち悪くないですか?」

「え…」

「俺、正直思うんですよね。そういう輩って一番触りたくないって。関わりたくないなって。お姉さんも思いませんか?」

彼はそう言いながら笑っていたその笑顔は本当に鳥肌が立つほど怖かった。女性は泣きそうな顔をした。フォローしなきゃと思っていると…想真が返した。

「そういう男には引っかからないで下さいね?」

「え…?」

「じゃ、あ、因みに俺、想真の兄です。」

「え!?」

「じゃーねー」

彼はそう言いながら部屋に行ったので急いで追いかけた。いつもより軽い態度の彼。

「ちょっ!そんな嘘ついていいの!?」

「声デカイ!」

「だって!!!もし、ダメなこと書かれたら!」

想真が部屋に入るので一緒に入り『話聞いてますか!?』と怒鳴った。すると…。

「言っておくけど、俺がここにいることより誰といることのが叩かれるんだぞ?自分も警戒しとけよ」

「え!?嫌だよ!そんなの!面倒!」

「だったらあぁいう時は『おにいちゃん』とか言えよ。ごまかしきかねーだろ。たくっ使えねーあぁーあ!」

想真はソファに腰かけながらそう言う。イライラして来たので帰ろうとすると…

「いいのか?電話、急がなくて」

「あぁ!」

「お前忘れてた?バカだな」

「うるさいな!黙っててよ!」

「言われなくても。ここなら聞こえやすいだろ」

想真はそう言い鞄からPCを出してヘットフォンをかけて仕事をし始めた。

え…もしかして、電話しやすくしてくれたの?ファミレスとかだと電話出来ないからって…?なわけないよね。

彼は何も言わずに今度は立ち上がり部屋から出て行く。

どこに行くんだろう…。

そう思いながらも電話をかけると…陽多は出てくれない。

「ちょっと置いてからにしよっ」

「出ねーの?」

ドアの方に見るとジュースを持った想真が現れた。

「あ…はい」

想真はそのままさっきの席に戻り、ジュースを朝瑞の前にも置いた。

「あ…ありがとうございます」

「いや…今は仕事じゃねーかな」

「仕事…?」

「陽多、今ドラマ入ってっからな」

「そっか…ドラマか」

電話に出ないならここに入った意味ってなんだろう。

そう思っても仕事をしている人の横で歌えないし、そもそもプロの前で歌いたくない。そう思い仕方なく静かにスマフォを広げると…バンッ。
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