Glassノ器

□瞳.-Eyes-.
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やべ…。

自分の欲望に支配されそうになった。一度懐中電灯を下に向けて…天井とうつした。

「絆?絆?大丈夫?」

名前を呼ばれて絆は床に座った。

「はい!!!」

座ったのを確認してから懐中電灯を絆にあてた。

「絆?何してるの?」

「あ、いや…鞄を床に落としちゃって…」

「あぁ…そっか!見つからないモノでもある?」

「うん…」

櫻は絆の横に座った。

「真っ暗の中じゃ探せないよ?電気ついてから一緒に探そう?」

「うん…」

悲しそうに下を向く絆を見て櫻は頭を撫でた。

「そんな大事なもの?」

「うん…」

「よし!一緒に探そう!何落としたの?」

「え?だっ大丈夫だよ!!!」

「いいの!何落としたの?」

ライトを床に向けて櫻も探し始めた。

「おーい…何落としたの?」

すると『ヒック…』というひゃっくり音がして櫻はびっくりして絆を見た。

「どうした!?なんで泣いてるの?」

櫻は自分のパーカーで絆の頬を優しく拭いた。

「おいーどうした?そんな大事だったの?」

「ネッネッ…」

「ね?何?」

「ネックレス…ヒック…」

「ネックレス?首の?なんで鞄に…」

「櫻からもらったネックレス…ヒック…何かの拍子に切れたら…ヒック…嫌だし…フラれるなら…ヒック…着けてたら言いだしにく…」

ガバッ。

櫻は絆を優しく抱きしめていた。

「櫻…」

「絆って…バカだな…」

「バッバカって…」

「フルって…好きな人フルわけねーよ。」

「好きって…ヒック…」

櫻はゆっくり絆を離してオデコをくっつけて言った。

「好きだよ…絆のことが好き。俺と本気で付き合ってくれませんか?」

「…わぁーん…ヒックエグッ…」

「なんだよーどっちなんだよ」

「好き…好きです…櫻のこと好き」

「ありがとう…答えは?」

櫻が首を傾げると絆は泣きながら首を縦に振った。

「はい…私でいいなら…付き合って」

「絆じゃなきゃ嫌だよ…絆がいいよ…」

「うん…ありがとう」

櫻はキスをしようとしたが…絆が下を向いたのでオデコに優しくキスをした。

「大好きだよ…絆」

「うん…ヒック…ありがとう」

ギューを優しく抱き締めていると電気がついた。

「おっ!!!ついたなぁ!」

「うん…」

「絆、泣きすぎ!」

「だって…こんなことってあり得ないもん!!!」

「え?何が?」

「だって好きな芸能人と付き合うなんて…」

「…俺もそう思ってたよ。歌手とファンは付き合えないって…でも唯が応援してくれてて。」

「唯くんが?」

「うん…唯が絆のこと好きだったら頑張れってずっと言っててくれたんだ」

「そっか…嬉しい」

絆が櫻の胸の中に入ると櫻はそのままギューと包み込んだ。

「絆…好き」

暫くして櫻が思い出すように言った。

「そうだ!!!ネックレス!!!」

「あ…うん!!!」

櫻が探そうとすると絆がまた必死に探し始めた。それにまた目がいってしまい櫻が止めた。

「絆…絆!!!」

「ん!なに!?」

床に座り絆が振り返った。櫻は絆を後ろから抱きしめた。

「きゃ…何?」

櫻は絆の耳元で…

「俺も男だからさ…絆の今の体制は…我慢するのキツイ。俺が探すから絆はソファーに座ってて…」

絆は顔を真っ赤にして静かに『はい』と言った。絆は真っ赤な顔のままソファーに大人しく座った。櫻が探していると…

「あっ!!!」

「あった?」

「うん!ソファーの下に!」

櫻はソファーの下に潜り込み手を伸ばした。櫻が取ったのは絆が探していたネックレスだった。

「あったぁ!ほら!」

ソファーから顔を出すと顔を真っ赤にさせた絆と目があった。

「あ…えっと…つっ付けるね」

櫻もつられて赤くなり、立ち上がって絆の後ろに回り込んでネックレスをつけた。

「あ…ありがとう」

ネックレスを触り眺めていると…そのまままた櫻に抱きしめられた。

「さっ櫻…!!!」

「…絆…」

「はっはい!!!」

「好き…好き…」

「わっわかったから!!!あんまみっ耳元で言わないで…!!!」

「うん…絆…全部教えて?」

「え?なっ何を!?」

「アドレスとか番号とか」

「あっ!そっちか!うん!」

「そっちって?」

「ううん!なんでもない!!!おっ教えるから離して…」

「離れたくない…」

「え…」

「ずっとこうしてたかった…はぁ…好き」

「わっわかったから…」

櫻はそこからジャンプしてソファーに座った。ポケットからスマホを出した。絆も慌ててスマホを出した。赤外送信でアドレスや番号を交換してラインのアカウントも交換した。

「あっありがとう…」

「俺も…」

すると櫻は絆の手を優しく握った。

「え…?なっなに?」

「ん?握ってちゃダメ?」

「ううん!!!ううん…」

絆はいちいちドキドキしてしまって心臓が耐えられなくなっていた。

時計を見るともう24時を回っていた。

「わっ…終電」

「え?あ…もっないかも…」

絆は自分のスマホで電車を調べたが終電はもうなかった。櫻が覗き込んで言った。

「実家暮らし?」

「え?あ、ううん!一人暮らしだよ?」

「…明日仕事早い?」

「あ、明日はないの…」

そう言い切るとまた顔を赤くした。

「どうしたの?」

「…いや…本当は仕事だったんだけど…バイトの子が…」

「バイトの子が?」

「バイトの子が…その…うん…」

「ん?…」

「なんでもない…」

顔を真っ赤にして絆は下を向いた。櫻にはよくわからないまま笑った。

「そっか…じゃ…ここに泊まれば?」

「え!?でも…」

「大丈夫だよ?レッスン生たちも出入りするし…シャワーもあるし…布団は…このソファー使ってもいいし…」

「あ、でも…よくわからないとこに…一人でいるのは…」

「ん?俺も一緒にいるよ?」

「え?」

絆はびっくりして固まった。櫻が苦笑いをした。

「俺と一緒は嫌?」

「そっそんなことない!絶対ない!!!」

「そう?よかった!!!」

櫻はまた頭を撫でた。絆が下を向いた。

「さっ櫻…あの…あまり頭を撫でないで…」

「なんでー?」

「ドッドキドキして…耐えられない…」

そう言われて櫻も顔を赤くした。絆の髪の毛をワシャワシャして笑った。

「ちょっと辞めて!!!乱れる!!!」

「可愛い事言う子は乱れちゃえー」

「ちょっと…櫻っ!!!」

「へへっ…さてと…シャワーでも浴びようかな…」

「いっいってらっしゃい…」

「女の子用のもあるから…」

「わっ私は…あの…その…」

「二階にあるよ?」

「うっうん…」

櫻は絆の荷物を持って女子更衣室まで案内した。

「はい。道に迷わないでね?」

「だっ大丈夫だよ…」

「うん!あとでね?」

櫻はそのまま行ってしまった。絆はドキドキしながら更衣室に入り洋服を脱いだ。

「はぁ…櫻くんって本当に慣れてるな…てか…どうしよう…あんまり化粧品持って来てないし…どうしよう」

そう悩みながらも体だけ洗った。
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