Glassノ器
□瞳.-Eyes-.
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シャワールームのカーテンを開けて鞄の中身を見た。化粧ポーチの中を見るとマスカラ・ビューラー・ファンデ・リップのみだった。
「だよね…シャドーもアイライナーも…あるわけないよね…どうしよう…でもこのまま頭洗わなかったら汗臭いし…どうしよう」
絆は悩みながらも頭と顔も洗った。
「どうしよう…」
悩みながらも用意されたタオルで体と頭を拭いて着て来た洋服に着替えて軽く化粧をし始めた。
「うーさっきと化粧違う…やっぱりコンビニ行こうかな…そしたらラインも売ってるし…」
悩みながら更衣室を出ようとすると…更衣室の前に櫻が髪の毛がビショビショのまま座って待っていた。
「あれ?顔洗ってない?」
「わぁ!!!なんでいんの!?」
「迷子になっちゃうかなと…?」
絆はそのまま更衣室に戻った。
「ちょっ!!!絆どうした?なんで引っ込む?」
「わっ私、コンビニ行って来る…」
「え?なんで?なんかあった?」
「ちっ違うの…違う…ノッノーメイクはちょっと…」
櫻は溜息をついて更衣室に入って来た。
「わっわっ!!!」
櫻は棚などを漁って…メイク落としを見つけた。
「よし…っと!」
「櫻…?何を?」
櫻は傍にあった椅子に座って絆を手招きした。
「なっ何?」
ビクビクしながら近づくと櫻が膝を叩いた。
「ここに座って?」
「え?さっ櫻の膝…?」
「うん?」
「え…え?」
「ほぉら!」
櫻は立ち上がり絆の手を引っ張って優しく膝に座らせた。
「さっ櫻…恥ずかしい…近い…近い…」
「はいはーい!動かないの!」
櫻はニコニコしながら絆のメイクを落とし始めた。
「嫌!!!ちょっとダメだって!!!」
「ジッとして!!!」
櫻の声にびっくりして絆は止まった。全て落としきると…櫻は優しく両手で絆の両頬を包んだ。
「言ったじゃん?全部見せてって」
「でっでも…恥ずかしい」
顔を真っ赤にしていると櫻がとろんとした目で言った。
「絆…キスしちゃダメ?」
「え!?え!?」
「ダメ?…ずっとしたくて…ダメかな?」
絆は悩みながらも…ゆっくり頷いた。すると櫻はこれ以上ないぐらい優しくキスをした。割れ物を扱うように優しく。
「ンッ…」
絆の体がビクッとすると櫻が唇を離し笑った。
「わっごっごめん…」
「…反応しないでよ…」
「しっしてなんか…」
「じゃー…してもいい?」
「待っ待って…」
「ん?」
「なっ慣れてないの…私、こんな…慣れてないから…もう持たない…」
櫻は溜息をついてから絆の頭を自分の胸に着けた。
「きゃっ!!!ちょっと櫻!!!」
「耳すませて…」
「え…?」
絆は目を閉じた。すると心臓の音がドキドキと聞こえた。顔を上げると櫻は顔を真っ赤にしていた。
「一緒…俺も一緒なの!慣れてないの!!!好きな子相手に慣れとかないの!!!わかった?」
「え…うん…」
ドキドキして顔を見ると…
「キスしてもいい?」
「はい…」
そしてまたキスを落とした。今度は濃厚に…舌を入れようとすると絆の体がビクッと反応した。
「入れちゃヤダ?」
「いっ入れて…いいです」
「なんで敬語ぉ?」
「だって…だって!!!」
絆はそう言って立ち上がった。
「絆?」
櫻が不思議そうに首を傾げた。絆はドキドキしながら返した。
「わっ私は…いっぱいいっぱいで…いっぱいで…いっぱい…」
絆はそう言いながら泣き始めた。櫻はクスクス笑って抱きしめた。
「もうわかったって…わかったから」
櫻はそう言いながら頭を撫でた。
‐絆が泣き止んでから手を繋いでスタジオに戻った。スタジオに着くと櫻がドライアーのコンセントを入れた。
「ほら、ソファーに座って?」
「え?じっ自分で出来るよ?」
「いいのぉ!はい、座る!」
「…でも」
「絆が終わったらやってもらうの!早く!」
「じゃ、先にやるよ?」
「もぉ…」
櫻は優しく絆を座らせた。
「座りなさい!」
「うん…」
絆はカチンコチンになりながら座っていた。ブワォーという音を出しながら絆の髪の毛を乾かした。
「絆の髪の毛サラサラだね」
「そう…かな?」
「うん…綺麗」
「ヒャ…」
「何その声…」
「耐えられないって…」
「好きなんだから仕方ないでしょ?」
「仕方なくないの!!!」
5分程度で乾くと絆が真っ赤な顔のまま振り返った。
「次は櫻!!!」
「うん!!!」
ソファーに座り絆が後ろに立った。またブウォーと音が鳴り乾かし始めた。わしゃわしゃされると櫻は笑い始めた。
「どっどうしたの?」
「あははっくすぐったい!!!」
「え?そうなの?ごめんね?」
「いいよアハハッ大丈夫!!!」
クスクス笑っている。それが可愛く想い前髪を乾かした。
「ん…」
「ん?どうしたの?」
「ううん…」
前髪を丁寧に乾かす絆。計算なのかとさえ思えた。櫻の後頭部に胸が当たり…それが気持ち良くて仕方なかった。
「くすぐったくない?」
「うん…気持ちいい」
「え?気持ちいいの?」
「うっうん…」
思わず出た本音。恥ずかしくなって辞めて欲しくないと思えた。髪が乾くと絆がコンセントを抜いた。
「これ、どこに置いておけばいい?」
「あ、もらうよ」
ドライアーを受け取り棚に閉まった。
「んじゃ、寝ますか」
そう櫻が言うと絆がビクッとさせたので彼は笑った。
「大丈夫…絆はソファーに寝て?」
「え?さっ櫻は?」
「俺はその辺で…だいたい深夜レッスン終わったら床で寝てるし」
「え…背中痛くなるよ?私が床で寝るよ!」
「そういうわけにはいかないの!」
「でも…」
「いいから!絆はソファーね!」
「じゃ、じゃー!!!一緒に寝よう…」
「え?」
「ソファーを半分こにすれば…」
櫻はニッと笑って言った。
「ありがとう…じゃ…」
櫻はそのままソファーに横になり腕を伸ばした。
「腕枕…なんていかがですか?」
「え…」
モジモジして迷っているようにも見えた。
「絆…おいで?」
絆は恥ずかしがりながら櫻の横に寝た。
「顔…近いよ…」
「もっと近くに出来るよ?」
櫻はからかうように腕を曲げて顔を近づけた。
「ヒャー…」
櫻は優しく絆を抱き締めた。何度もオデコにキスを落とすと絆は『辞めて!』と嫌がったが櫻は『嫌…』と言って何度もキスをした。すると絆は顔を上げた。目が合うと絆が目を瞑ったので…櫻は優しく唇にキスをした。
「ンッ…ンンンッ…」
耳に聞こえる絆の声が櫻の理性を壊そうとする。唇が離れると唾液が腕に落ちた。
「声…ヤバイから」
「だ…だって気持ちいいんだもん…」
「…俺も気持ちいいよ?」
「本当?」
「うん…もう寝ようか?」
「うん…」
好き。お互いに何度も言った。櫻の腕の中で眠ると櫻の匂いがして安心出来た。幸せでたまらなかった。