Glassノ器
□瞳.-Eyes-.
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絆は駅のホームで時計を見た。時間は14時を回っていた。慌てて櫻にラインを送った。
絆『櫻?ごめん、ちょっと遅れると思う!ごめんね!』
そう送るとすぐに櫻から返事が来た。
櫻『大丈夫だよ。急がなくて大丈夫だから気をつけてね?』
絆『ありがとう!!!』
絆はルンルンしながら電車を待った。嬉しくてたまらなかった。電車が来て…乗車した。少しだけ混んでいて座れる場所もなかったので手すりに掴まって少し眠った。すると先ほど沢山降りた駅で沢山乗って来た。のみ込まれないように立っていると…トントン。
またお尻を軽く叩かれた。
え…。
さっきまでは手の甲で様子を伺うような手つきだったのに、今度はそんな素振りもなくお尻を揉んで来た。揉んだり弾いたりして遊ばれていた。
どうしよ。今度は手すりあるし…。
そう思い足を閉じた。お尻にも力を入れると…その手は太ももを触って来た。
「くすぐったい…」
小声でそう言うと…
「ヒャ…」
いきなりパンツをつままれ引っ張られた。
「え…ダメ…」
ジワジワとお尻が半ケツ状態になるのがわかり、首を横に振り“イヤイヤ”と表すと…ユルユルになったパンツ越しに絆の穴をグリグリと刺激された。
アッ…ダメ…
そう思っていると電車のドアが開いて降ろされた。絆は慌ててトイレに駆け込んだ。
「ハァハァ…何今のは…痴漢…さっきの人と一緒…なんで…」
何度も自分に問いかけたが体は感じていた。パンツをちゃんと履きなおして荒い呼吸を整えてから電車に乗り駅に着くと櫻に電話をいれた。
「もしもし?櫻…?」
「絆ー♪何してんのー?早く会いたいなぁ」
「うん!!!今駅着いた!」
「そうなの?迎えに行こうか?」
「え…来れるの?」
「うん!今から出るね!」
「うん…どっどこで待っていようかな…」
「んー…出来れば…ヒカリヘの地下2で待ってて?あそこ人多いし!」
「ひっ人多いと…」
「その階にチョコレート屋あるの知ってる?」
「うん!知ってる!そこにいるね?」
「うん!!!待ってて!すぐ行くね?」
電話を切ると櫻は急いで準備をした。傍のクッションでゴロゴロしてた唯が振り向いた。
「絆ちゃん?」
「うん!ヒカリヘのチョコ食べてくる!」
「あぁ!美味かったとこか!」
「そう!行って来る!」
「気をつけろよ?」
「うん!!!」
櫻はルンルンしながらキャップをかぶりスタジオを出た。外を歩いていると…前から暖琉が笑顔で来た。
「櫻くん…レッスンは終わったの?」
櫻は嫌な顔を浮かべた。
「レッスンは別にないんで」
「じゃー今日は自主練なのか!」
「…はい。」
「これからどこに行くの?」
「…俺の勝手です」
櫻はプイッとして早歩きでヒカリエに行った。
ー「あぁ…どうしようかな…」
チョコレート屋に入り絆は待合席で待っていた。
このままの下着で会うのも嫌だし…やっぱりダサくても買おうかな
絆はそう思って席を立ち…ラインをしながらコンビニに行った。
絆『櫻!ごめんちょっとチョコレート屋で待っててくれるかな?ごめんね?あ、名前書いてあるから。城ヶ根って書いたから先に入ってて?』
櫻『絆?どこに行くの?』
絆『…すぐ戻るから。ごめんね』
櫻『わかった。気をつけてね?』
櫻は早歩きしていた足を遅めた。
「どこ行くんだよ…」
溜息をつきながら櫻はヒカリエのチョコレート屋に着いた。名前を見ると『城ヶ根』は次だった。辺りを見回したが絆はどこにもいなかった。櫻は舌打ちをして席にも座らず立って待っていた。暫くすると店員さんが来て名前を呼ばれたので、先に店内に入った。席に通されると『お連れ様は?』と聞かれたので『少し出てるので一緒に注文聞きに来てもらってもいいですか?』と返した。5分してようやく絆が来た。
「櫻…ごめんね!!!待ったよねハァハァ」
絆の顔を見ると…イライラした気持ちも少しは落ち着けた。
「ううん!大丈夫!さて、何食べる?」
櫻はチョコレートのメニューを出した。
「わぁ…どれも美味しそう…」
「前に来たときは…これとか美味しかったよ?」
「あぁ…雑誌で言っ…」
櫻が絆の口を塞いだ。顔を上げると櫻は優しく笑っていた。離れた手で人差し指を唇の前に立てた。
「あ…ごめん」
「俺もね?どのチョコがいいかな?」
「んー…じゃ…櫻のオススメにしよ!」
「うん!」
そう言いながら店員さんにチョコレートを4つと甘めの珈琲を頼んだ。少ししてから飲み物とチョコレートが運ばれて来た。
「はぁ…凄い」
絆がため息を着いて言うと櫻が笑った。
「どうしたの?」
「え?あ…なんか…私こういうとこ入るの初めてで…なんかすごいなって」
「そっか…味も凄いから食べて!」
「うん!!!」
満面の笑顔で2人はチョコと珈琲を飲んだ。全部が美味しくてたまらなかった。
ーチョコレート屋から出てヒカリエをちょっと歩いた。人が多くて狭いような広いような店内を歩いて…ビルを出た。
「さてと…どうしよっか」
時計は18時を過ぎていた。櫻の問いに絆も困った顔をした。なので続けた。
「お腹すいてる?」
「んー…ちょっと。」
「じゃー何か食べようか!」
「うん!」
「何かご希望は?」
「…櫻は?」
櫻は少し考えてから…『和食は?』と返した。絆も『うん!』と笑った。
どこ行くのかな…また高いとこなのかな…。
絆は少し不安を感じていた。すると彼はスマホを出した。
「あれ…こっちだったはずなんだけどな…」
「え?なにが?」
「ん?笑い屋…」
「…え?チェーン店の?」
「え?うん…嫌?」
「ううん!ううん!嫌じゃない!」
「よかった!!!あ、こっちだ!!!」
櫻がズンズン進むので小走りでついて行くと彼は止まった。
「櫻?」
「はい」
櫻は手を出して来た。それが嬉しくてドキドキした。そのまま2人はスマホ頼りに“笑い屋”に行った。“笑い屋”はファミリー価格の和食屋さんだった。絆も安心しながらメニューを見れた。
「どうしたの?ウキウキして…」
「え?そうかな…和食好きなんだもん!」
「そっか…よかった!」
櫻が笑ってくれるのが嬉しかった。注文したのは櫻が“トンカツ定食”で絆は“白身魚の煮つけ定食”にした。運ばれて来た料理はどれも美味しそうで小皿で交換しあって食べた。
ー「美味しかったね!」
絆が笑顔で言う。それに櫻も笑顔で返した。
「そうだね!!!」
時計を見ると21時を回っていた。少し暗い顔をした櫻の手を絆が握った。ビクッと体が震えると…お互い顔を真っ赤にしていた。手が触れるだけでドキドキする。目を見るだけで背筋がゾクゾクする。もう体は知っている…。
ポツ・・・ポツッ。
いきなり雨が降って来た。手を繋ぎながら走った。どこの屋根にも人がいた。空いている屋根を探してようやく入った。
「あぁ…結構濡れたね」
髪の毛をわしゃわしゃしている彼に絆は鞄からハンカチを出した。
「いいよ…絆、使いな」
「大丈夫だよ…櫻が風邪ひいちゃう」
「それは絆も同じ!」
2人で言い合っていると櫻が上を見て…ハンカチを受け取り絆の頭を優しく撫でた。
「ちょっと櫻!!!」
「絆…」
「へ?」
「ちょっと雨宿りしない?」
そう言われて絆も上を見た。そこはラブホテルの屋根だった。