Glassノ器
□輝く.-Shine-.
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すると唯も足を止めて振り返った。絆は不安な顔をした。
「唯くんは…どこまで調べたんですか…?」
唯は溜息をついて『こっち来て?』と言って自販機がある扉を開けた。言われるがまま部屋に入った。
「えっと…絆ちゃんのことも…なんとなくわかった」
「え…どこまで?」
唯は溜息をついて頭をかいた。絆を椅子に座らせた。唯は自販機でスポーツドリンクを3本買った。そしてその1本を絆に渡し隣に座った。
「全部じゃないよ?絆ちゃんが…族に入ってたってことは彪悟を調べてわかった。でも、俺が調べたかったのは彪悟のことだから…それ以上は調べてない」
「…そう…ですか」
「絆ちゃんは彪悟のこと…知ってるんだよね?」
絆はゆっくり首を振った。
「覚えてないんです。あの時色々あり過ぎて…だから彪悟に名前言われても…全然わからなくて…わからなくて…」
絆はそう言いながら泣き始めた。唯は頭を優しく撫でてくれた。
「ライブには彪悟…連れて行くよ。俺が必要って言えばここに残ってらんないから」
「唯くん…ごめん…お願い…お願い…櫻には…櫻には…」
「言わないよ…言わないからもう泣くな…」
唯はどこまで知っているのかわからなかった。だから怖くも感じた。櫻たちがライブ中は彪悟に怯える必要もないことが嬉しかった。
唯に背中を押されてスタジオに戻った。
「絆!!!」
櫻は絆を見るなり駆け寄った。
「どうした?唯になんか言われた?」
「なんで俺なんだよ!!!」
唯は自分の鞄の前に行きスポーツドリンクを入れた。
「どうもしないよ?大丈夫…」
「大丈夫って…泣いてる…」
「ごめんね?」
絆はそう言いながら櫻に抱き着いた。櫻もびっくりしながらも優しく抱きしめた。それを見ていたスタッフが『早くしろ』とイライラしていた。慌てて離れると唯が櫻にスポーツドリンクを渡した。
「はい、仕事すんぞー」
「はいはーいっと!絆、そこで見ててね?」
「うん!!!」
笑顔で言いながら次の瞬間から真剣な顔をしてダンスをした。
夜の11時を回るとリハは終了した。
「では、明日は現地に出発です。9時には必ずここに集合。時間厳守。以上」
皆が返事をした後唯が手を上げた。
「はいはーい!!!彪悟さんは来るんですか?」
スタッフが返した。
「彪悟はお手伝いだからな?来るか?」
スタッフが彪悟に聞いたので唯が割り込んだ。
「色々手伝って欲しいこともあるし、このままマネージャーやるっていうなら…同行してもらってほうがいいと思うんですが…」
唯がそう言うとスタッフは少し悩んでいた。彪悟はニヤニヤしていた。
「唯くんがそこまで言うなら、一緒に行かせてもらいますよ?」
「そうか?んじゃ、同行宜しく!ホテルはスタッフAチームと一緒でいいな?」
「はい、もちろんです」
暖琉の同行が決まったが、絆は怖くて仕方なかった。スタッフが機材を片したりしている中で櫻は絆の手を引いた。
「あ…待ってるね…シャワー浴びるでしょ?」
絆が引きつった笑顔を出すと櫻は絆を御姫様抱っこした。
「キャッ!!!ちょっと降ろして!!!」
「待たせない。一緒に来てくれないならこのまま一緒に行くよ?」
「行くよ!行くから降ろして!ハズイって…」
床に降ろしてもらい、櫻に手を引かれてスタジオを出るとそのまま男子更衣室に行った。
「ちょっと待って…ここって更衣室でしょ?」
「大丈夫だよ!俺らしかこの時間いないから…」
「嫌!!!入れない!」
「入るの!!!」
櫻は絆をまた持ち上げた。びっくりしている絆をそのままシャワー室に連れて行った。
「ちょっと櫻!何!?」
「何?じゃない…唯と何してたの?」
「何って…別に…何も…トイレの前で会っただけだし…」
「ふーん…」
櫻は絆のシャツを捲った。
「ちょっと何?」
慌てて櫻の手を振り払い洋服を直すと櫻は絆に優しくキスを落とした。
「ン…さくっ…」
櫻は手前にあったシャワーのレバーを回してお湯を出した。絆の手を掴んで逃がさないようにした。
「キャ…」
それでもキスを辞めず…濡れた絆の体を優しく抱きしめた。唇が離れて櫻はオデコをくっつけた。
「泣くなら俺の前で泣いて…他の男の前で泣くな」
「…うん…ごめんね…」
涙が出そうになるとまた彼はキスをしてくれた。シャワーが顔に流れると息をするのも大変になる。息をしたくて顔を上げるとアゴを掴んでキスをする。頭の上が白い雲がマクが広がると…シャワーが止まる。櫻に寄り掛かり荒い息をすると…。
「息出来た?」
「え…?ハァハァ」
櫻は口を塞ぐようにキスをして…自分の息を絆の中にいれた。足の力が抜けて櫻の腰を絆が掴むと櫻は絆を持ち上げた。
「ン…ンン…櫻ぁハァハァ…」
櫻はニッと笑った。
「息がしたいならハァハァ…他の男に笑うなハァハァ」
「櫻…」
「他の男の前で泣くな…他の男に笑いかけるな…他の男に気を許すな…俺だけを見てろ…俺だけを…」
櫻はそう言いながらしゃがみ込んだ。ゆっくり床に降ろされ…彼が泣いていることに気が付く。
「ハァハァ…櫻…ハァハァ」
顔がよく見えない。
「櫻…?」
彼の背中を撫でると…櫻は絆を抱きしめた。
「…櫻?」
櫻は小声で返した。
「彪悟となんかあんの?」
「…え?」
「唯が彪悟を連れて行くって言うから…一緒に行きたくないって言ってたのに…」
「なっ何も…」
櫻はまた絆をギューと抱き締めた。
「…絆…」
「ん?…どうしたの?」
「彪悟となんかあるなら…言って」
「…何もないよ」
言いたいことは沢山あった。でも、言えることは何一つなかった。またシャワーを出して櫻は上を脱いだ。すると絆は傍にあった石鹸をタオルで泡だてて笑った。
「洗ってあげるね…」
「洗ってくれるの?」
「うん!お疲れ様!」
絆は櫻の体を優しく洗い始めた。ジャージも脱いで足まで洗っていると櫻は絆の洋服も脱がし始めた。お互いに真っ裸になると泡だらけの櫻は絆の体に抱き着いた。一緒に泡だらけになると恥ずかしさと楽しさも沸いて来た。ドキドキするのはきっとカーテンでしか隠されてないことだろう。あまり声を出せなかった。チラチラ見える足首が緊張感を与えていた。
「絆…アワアワ?」
「え?うん?泡だらけだね…」
恥ずかしく笑うと隣のシャワーが動き始めた。すると櫻はヌルヌルの手で絆の胸を揉み始めた。
「アッ…ちょっとダメだって!!!」
「いいじゃん?」
「ダメ!!!」
イチャイチャしていると…
「ヤルなら外でヤレ!」
唯の声がした。櫻はクスクス笑った。
「唯ぃー?今シャワー?」
「どうでもいいからさっさと帰れ」
「今日は帰らないよー?スタジオに泊まる!」
「え…そうなの?」
絆が不安そうな顔をした。
「はぁ?泊まる!?辞めろって!!!」
唯は怖い顔をしてカーテンを開けて櫻を睨んだ。
「唯!?」
「泊まるって!!!泊まるなよ!」
「え?いや、だって当分会えなくなるから!!!今日楽しみたいし!帰ったら楽しめないし」
「そういう問題じゃない!!!!ホテルとかあんだろ?」
「いや、で、でも!!!遅刻とかさ…」
絆は顔を真っ赤にして体を丸くした。櫻はどんどんイライラを増して立ち上がった。
「遅刻すんなよ!明日遅刻したら飛行機乗れないんだぞ!」
「だからここに泊まるんだろ?変なこというな!」
「言ってない!普通だろ!?ふざけんな!!!」
「…あの…」
絆は精一杯体を隠した。唯と目が合うと唯は顔を真っ赤に染めてカーテンをバッと閉めた。
「あぁ!!!唯!絆見んなよ!!!見た?見た?」
「見てねーよ!ボケ!!!」
唯は暴言を吐いて服を着替えていた。