Glassノ器
□瞳.-Eyes-.
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イベントを終えた週の日曜日は休みだった。なんの予定もないので部屋でのんびり寝ていた。その時、唯が部屋に入って来た。
「櫻!いつまで寝てんだ?」
「…なんだよ…今日は休みだろ」
「休みだけど15時回ってるぞ?一日の半分終わったぞ?」
「うっせーな…眠いんだから寝かせろ」
「…お前が暖琉の出された条件。俺も呑んだ」
「はぁ!?」
櫻はびっくりして起き上がった。唯は優しく笑っていた。
「そのまま絆に突っ走れ」
「ちょっと待て。唯はなんの条件を…」
唯は何も言わずに居間に行った。慌てて櫻も追った。
「おい!!唯!!!」
居間に行くと暖琉が笑顔で座っていた。暖琉は満面の笑顔で立ち上がった。
「おはよう!櫻くん!」
「…おはようございます」
「何が食べれるのかな?」
「はぁ?」
「朝食だよ。お腹空いてるだろ?」
「…大丈夫です」
「そういうわけにはいかない…パンでいいかな?」
「…はい」
暖琉はニコニコとしながらトーストし始めた。唯と櫻は椅子に座った。
「唯…何があった?」
「…恋愛は好きにしろ」
「え…」
「条件は飲んだ。でも…絶対に心は許すな」
「え?うん…信じてはいないけど…」
「そういうことじゃない。気も許すな。アイツ、何を考えてるかわからない」
「…うん?わかった…唯は…恭子さんのこと?」
唯は櫻と目を合わせて笑った。
「あぁ…恭子のこと…全部調べてたよ…」
「え?全部?」
「あぁ…いいなぁ櫻。気を許したら、夏音も絆もお前の弱みになる」
「え…」
「いいな?」
櫻は静かに頷いた。数秒して暖琉がトーストパンを持って来た。
「唯くんもまだ食べてなかったよな?一緒に食べろよ?」
いつの間にかタメ口になる。暖琉は何を考えているかわからない人間だった。
それでも櫻は絆への気持ちは止められなかった。
ー水曜日当日。櫻はドキドキしたままスターバックスに行った。
「そう言えば時間言ってなかったな…何時に来るかな」
そう思いながら櫻はスタバで飲み物を買って、この間の企画で待っていた席に座った。手はピリピリと痺れていた。
3時間待った。時間は14時ちょうど。
仕事かな…どうしたのかな…。
不安な気持ちが抑えられない。櫻は小声で『絆…絆…』と言い続けた。
14時45分…。
階段を上げってくる音がした。何十人という客が上がって来ていて、もう顔を上げるのも面倒だと感じた。その時…。
「あ…いた…」
「え…」
顔を上げると絆が不安そうな顔で立っていた。
「絆…」
「おっ遅くなってごめんなさい…色々と考えちゃって…ごっごめん…!!!」
櫻は絆の言葉など聞かずに抱き締めたいた。
「…さっ櫻くん?」
「会いたかった…絆」
お店の中だということもそっちのけで2人供抱き合った。暫くすると絆が言う。
「…さっ櫻くん…ハズイ」
「…呼び捨てしたら離してあげる」
「…櫻…」
櫻は仕方なく離れて絆をソファー側の席に座らせた。
「ほっ本当に遅くなって…」
「全然…来てくれてありがとう。絆、何飲む?」
「え?いや、自分で」
「前にも言ったろ?」
そう言われても絆は立ち上がった。少し悲しい顔を櫻がすると絆は彼の洋服を掴んだ。
「え…?」
「一緒に…」
「ん?」
「一緒に買いに行く…」
頬を赤らめる絆が可愛いかった。
「うん…」
きっと俺も顔…赤いんだろうな。
そう思いながら…絆の手を繋ぐことは出来なかった。洋服を掴む絆の手が軽く震えていたから。レジの前に着きメニューをもらった。
「櫻は…何か呑むの?」
「あぁ!さっき暖かい珈琲呑んだから今度は甘いの呑もうかな!」
「そっか…!!!」
嬉しそうな絆を見るのは幸せだった。
「絆は何飲むの?」
「え?えっと…何にしようかな…モカも美味しそうだし…」
「チョコ系が好きなの?」
「うん!あ、でもいちごも好きだよ!!!」
必死にこの間のことを言う絆。櫻は笑った。
「大丈夫だよ!そんな必死にならなくても」
「だっだって…」
櫻は優しく笑った。
「ゆっくり…知って行くよ」
「え?」
「絆のこと。だから絆も俺のこと少しずつでいいから知って?」
「…うん」
レジの前に案内されて注文をした。櫻はダークモカフラペチーノ。絆はチョコレートフラペチーノを注文した。もちろん会計は櫻が支払った。
「トレーは持つ!」
と言う絆だったが…。
「階段危ないからダメ」
と櫻にトレーを奪われた。しょぼんとする絆は可愛かった。席座り…何も言わずにお互い飲み物を飲んだ。目が合うと…ドキッとして同時に逸らしていた。絆がソワソワし始めたので落ち着かせるために櫻が言った。
「絆…」
「ん?何…?」
「手…繋いでもいいかな?」
絆は顔を赤くして手を出した。ドキドキしながら手を握った。するとお互い目が合った。
“震えてる”
お互いが感じ取れるほど…それだけ安心出来た。16時を回ってスタバを出ることになった。櫻がキャップをかぶると…絆は少し悲しい顔をした。それをわかっていながらもキャップを外すことは出来なかった。手を繋いで外に出て…どこに行くかも決めていなかった。櫻は悩んでから足を止めた。
「絆…」
「ん?」
「スタジオ行ってもいい?」
「え?スタジオ!?」
櫻はニッと笑った。
「うん…あそこなら、今日は休みだから誰もいないし…のんびり出来る…それに」
「それに?」
「キャップも外せる」
そう言われた瞬間絆も笑顔で『うん!』と言ってくれた。まだ少し震える手は離れず、そのままスタジオに向かった。
「あ、コンビニ寄ろうか!飲み物とかお菓子とか!」
「うん…」
コンビニに向かい大きいペットボトルでコーラと紅茶・ポテトチップとポッキーなどスナック菓子やチョコレートをカゴに入れた。
「お握りとかお弁当とかも買っておこうか?それともどっかで食べる?」
「え…んー…おにぎりとかでいい」
絆はカゴを手にした。
「今度は私が持つよ!ね!」
「…ありがとう…でも重いからいいよ?」
「大丈夫だよ…?仕事で重いモノ持ってるもん!」
「…知ってる。」
「え…?」
櫻はニッと笑い絆の頭を撫でた。
「前に食べに行った…その時絆に…」
「え…?」
絆が顔を真っ赤にすると櫻も赤くした。そして…。
「さぁ…買おう。」
カゴを持ってお握りを選び始めた。
ースタジオは真っ暗で電気もついていなかった。
「今日…本当にお休みなんだね」
「あぁ…スタッフもいないし!」
「ドア…開いてるの?」
「閉まってるに決まってるよ!でも俺らは鍵ってもんを持ってるの!」
櫻は笑顔で鞄から鍵を出してドアを開けた。
「ほら…電気ついてないから気をつけろよ?」
「うん…ありがとう!」
ゆっくり中に入りドキドキしながら櫻が引っ張る場所に行った。重いドアが開き大きな鏡が壁に設置されている部屋に来た。
「ここがいつもレッスンする場所」
「へぇ…凄い」
「でしょ?電気付けるね!」
櫻はそう言って電気をつけた。大きな鏡に櫻と絆が映る。
「絆?そこ座っていいよ?」
絆は言われるがままにソファーに座った。櫻がバスタオルを出してお菓子やおにぎり、サンドイッチなどを出した。
「あ、紙コップ探してくるね!」
「え?あ、うん!」
櫻はそのまま部屋から出て行った。絆はドキドキしてどうにもならなかった。その時窓がピカッと光った。
「え?カミナリ!?雨降ってるの?」
そう驚いているといきなり電気が消えた。
「え?うそ…停電?どうしよう…」
ビクビクして体を動かしていると…鞄が腕に当たりソファーから床に落ちてしまった。
「あぁ…やっちゃった…」
絆は慌てて鞄から落ちた私物を拾った。
「これと…これと…よし大丈夫…あれ…」
私物を鞄中に入れたがまた一つ一つ出して探した。でも見つからなかった。
「どうしよう…あれだけは…あれは…」
涙まで出て…絆はハイハイ姿で探した。
「どこかな…どこかな…もぉ…」
櫻は懐中電灯を持って部屋に入って来た。
「絆!大丈…」
櫻は絆を見た。スカート姿の絆はスカートの隙間からパンツを覗かせていた。