Glassノ器
□想い出.-memory-.
1ページ/45ページ
ー「よし、まぁそんな感じで理解したか?」
いつもの車の中で颯音が説明を終えて笑顔で言った。唯は助手席で熟睡しており、櫻は後部座席で横になっていた。
「2人供聴いてるのか?」
櫻が手を上げた。
「聞いてるよーちゃんとねー」
「唯ー起きろー」
颯音が唯を揺さぶって起こすと…。
「なんだよー眠いって…」
「知ってる!でもちゃんと聞いてろ!いいな!絶対バレるな!!!絶対だ!!!」
「わかってるよ…うるさいなぁ…まだ店空いてないでしょ」
唯はそう言いながらまた眠りに入った。
「最近唯…眠そうだね」
「あぁ…そうだな」
颯音は何かを知っている。でも、それを俺に言ってはくれない。
「ねぇ…颯音。今日何時に帰れる?」
「はぁ?今日は帰れねーって言ったろ?今日と明日は会報の散策で泊まるんだよ!」
「泊まるの!?」
「一番理解してねーじゃん!!!」
「ごめん…マジかぁ」
櫻は車の中で足をバタバタさせた。すると唯が言った。
「揺れる…気持ち悪くなる」
「はいはいはいはい!!!」
イライラしている櫻はスマホを出して絆にラインを送った。
櫻「ごめん…今日帰れないって言われた」
するとすぐに返事が来た。
絆「大丈夫だよ!27日には会えるし!気にしないで!仕事頑張ってね!」
櫻「ありがとう!」
スマホを鞄にしまい…櫻も店が開くまで眠りに着いた。
頭の中で音楽が流れた。子供の頃に母親が歌ってくれた歌。あれは…なんだったっけ?
「櫻!いい加減に起きろ!!!」
「はい!!!」
颯音に起こされて櫻は起き上がった。唯はもう出発できるようになっていた。
「もう行くの?早い…」
「早くない!!!さっさと出る!」
櫻と唯はデジカメと財布とスマホをお互いに持って車から降りた。2人供自前のキャップをかぶっただけのあっさりな格好だった。唯がため息をついて言った。
「さてと…どこ行きますか?」
「とりあえずオメザの珈琲でも…」
「そうすっか!んじゃ、ランドマークね!」
「おーう!」
2人は眠い顔のままランドマークの長いエスカレーターに乗った。土曜日だと言うのにサラリーマンたちも多く子供や家族も多かった。
「唯!唯!なんか緊張すんな!バレるなって言われると!」
「だったら黙ってろ!逆に小声のが目立つ!」
「はいはーい!」
2人はそのままランドマークに入り、まだ空いているカフェに入って珈琲を注文した。
「とりあえず、これも写真撮っとく?」
「うん!そうしよ!」
2人は珈琲をデジカメで写真を撮った。珈琲を飲みながら与えられた時間でどこに行くのか話した。
「今日絶対することはファンへのプレゼント個々で2種類。コスモワールドとカップラーメンミュージアムと赤レンガ倉庫に行かなきゃならないのは確定。」
「そうだな…とりあえず、ファンへのプレを探しながら…今日はコスモワールド行く?カップラーメンと赤レンガは同じとこだし!最後に大桟橋行かなきゃなわけだし!」
「そうだな…そうしよう…」
「唯、大丈夫?ちゃんと寝てる?」
「寝てるよ!大丈夫!それより、お前も大丈夫なのか?」
「どういう意味?」
「だから…絆ちゃんと!上手くいってんの?」
「一応ね?唯と恭子さんほどじゃないよ…」
そう言うと唯は一瞬悲しい顔を見せた。恭子と何かある…そう思ったが口には出来なかった。珈琲を飲んで目を覚ましたら、2人はランドマークを一周して、コレットマーレに戻って…簡単にモノを買った。唯は冬と秋用のロングTシャツ。櫻は冬っぽいネックレスとピアスにした。それも写真に撮って、その足取りでコスモワールドに行った。徐々に天気も悪くなって来て、流石に人も少なかった。外にあるシュールなゲームをして、ジェットコースターや占いの館にも入った。
「唯!唯!なんだった?」
「ん?俺、仕事やったから…今のまま楽しめって!」
「え?仕事にしたの?俺折角ウケ狙いで友達にしたのに!!!」
「ははっ。ウケたウケた!」
「唯ひどっ!」
「酷くねーよーだ!」
そしてお互いに写真を撮り合った。占いの結果と一緒に撮ったり、昼食を食ってる姿だったり、意味なくジャンプしたり…子供のように遊んだ。コスモワールドの中に似顔絵の館があったので入り書いてもらうことにした。
「キャップかぶったままでいいんですか?」
絵描きさんにそう言われたので、2人供顔を見合わせてキャップを撮った。絵描きの人も騒がずに真剣に描いてくれた。そして書き終わると…
「握手だけいいですか?」
「もちろんいいですよ!」
そう言って2人は握手をして写メも撮った。絵描きさんには『ありがとうございます!』と満面の笑顔で言われた。2人はルンルンしながらコスモワールドを出てスマホを出した。
「もう19時か…以外に早いな!」
唯がそう言うと櫻があくびした。
「唯と遊ぶの久しぶりだったもんな…ずっと仕事とかレッスンだし…」
「まぁ明日も漫喫しますか?」
「そうしましょう!で?颯音から連絡来てる?」
「いや…19時には連絡するって言ってたのにな…北山さんのが伸びてるかな」
「…んじゃ、お酒でも飲んどく?」
「あぁ駅前変わったよな!行ってみるか」
2人は疲れた体で駅前に向かった。そして、2階に上がりバーに入って窓際に座った。カクテル系のお酒を頼んだ。
「うわ綺麗…」
櫻がお酒を呑みながら言った。
「だな…」
唯の間が気になって櫻がニヤリと笑った。
「恭子さんと来たいってか?」
唯の顔が一気に真っ赤になった。すぐに否定もされた。櫻が笑いながら返した。
「なんだよ!来ればいいじゃん!2人でデートすればいいじゃん!俺たちのことばっか心配してんなよ!」
…唯の顔が一瞬暗くなった。そしてすぐに笑顔を作って『そうだな』と返された。
どうした?
そう思っても聞きずらかった。
「あの…唯…」
櫻の口が勝手に動いた。その時唯のスマホが鳴った。
「はーい!颯音遅いよ!もう櫻と一杯飲んでる!うん…駅のバー!…あぁわかった…出る!」
唯はスマホを切ってから言った。
「もうすぐ駅着くってよ!」
「そうなの?このままホテル直行かと思ってた!」
「そうだろ…多分そのへんのホテルに泊まるんだろ…でも歩いて行っちゃぁ…カッコもつかないし!」
「あぁ…事務所のカッコね」
「だろうな…まぁ…これ呑んだら行くぞ?」
「はいよー」
2人はのんびりお酒を呑んだ。おかげで颯音からの電話は山のように来た。お酒を呑み終えて2人はいたずらが成功した子供のような気分で颯音が待つ場所に行った。
「颯音!遅くなった!」
唯が走って行った。その背中を見てから後部座席に座る夏音がいた。
「はぁ…一緒に泊まるのか」
溜息をつきながらも車に2人も乗り込んだ。
「櫻ぁ…お疲れ様」
疲れ切った顔をする夏音が隣に座った櫻に抱き着いた。
「あぁ…お疲れ。今日もレッスン?」
「そうだよ」
「…楽しい?」
夏音は迷わず『楽しい』と返して来た。
「こら!そこ、くっつくな!離れろ!」
颯音にそう言われて仕方なく夏音は離れた。そして小声で言った。
「あとでね?」
「…あぁ」
どうすれば夏音はわかってくれる?
櫻は自分勝手な考えを抱いていた。自分がもとめたときはあんだけ夏音を束縛したくせに夏音が束縛することは拒否をする。
でも絆も傷つけたくない。2人供どうにかする!なんてことは出来ないのに…何を考えているんだと思えた。車はランドマークの中に入った。
「え?ランドマークに泊まれるの?」
「あぁ!嬉しいだろ!これも会報のためだ!ちゃんと写真撮れよ!」
「あぁ!わかった!」
車が止まると櫻はウキウキで降りた。そして、夏音が櫻の腕にしがみ付いた。
「櫻ぁ?今日はどこ行ったの?」
「え?今日は…コスモワールド!」
「えーいいなぁ!一緒に行きたかったな!」
「まぁ…これからどんどん仕事して行けば嫌ってほど行けるから」
「えー…仕事じゃなくて!」
「こら…そこはくっつくな…離れろ」
颯音が呆れるように櫻と夏音の間に入った。腕が離れて櫻はホッとした。