Glassノ器
□家族.-Home-.
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あのフェスから…櫻たちは前よりも忙しい日々を送っていた。Withは活動を復活させ、今までの唯や櫻がソロでやった曲を集めたアルバムを作ったりイベントやテレビにも呼ばれた。だが、櫻はそんな中でもすぐにやり遂げておきたいことがあった。それは…。
「この度、大変急な話ではありますが、私、明津櫻は一般女性と入籍いたしました」
記者会見を開き正式に公に発表した。あらぬことを書かれることを避けたかったからだ。
「式はまだ全然進んでないのでなんとも言えないのですが…」
恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちが交互に押し寄せて来た。記者会見が終わると颯音と一緒にテレビ局を出て…車で一旦事務所に戻った。するとニヤつき顔の唯がいた。
「お疲れー!」
「お疲れ…なんだよ!その顔!」
「入籍おめでとう!」
「あぁ…ありがとう」
少し照れ臭い。スマホを見ると絆から電話があったので折り返しをした。
櫻「あ、絆?…見た?」
絆「うん…嬉しいけど恥ずかしいよね」
櫻「うん…ハズイ!でも嬉しい…」
絆「うん…今日帰って来れる?」
櫻「うん!帰れる…予定…」
絆「予定なんだね」
櫻「これから打ち合わせして…終わり次第!」
絆「そっか…待ってるね!」
櫻「12時過ぎたら寝てね?」
絆「うん!わかった!」
ニコニコした気持ちで電話を切った。颯音に呼ばれて打ち合わせが行われた。打ち合わせの内容は次の新曲・ライブ・DVD撮影とWith活動目白押しだった。結果打ち合わせが終わったのは26時だった。颯音の車の快適さを痛感しながら櫻たちは自分たちの家に帰宅した。入籍してから颯音の家の近くに家を買った。そこで二人で暮らしていた。
「明日は8時に迎えに行くからさっさと寝ろよ!」
「えー初夜は?」
「んなの知るか!毎晩やってんだろ!初夜もねーよ!」
「はぁ?冷たっ!」
「いいからさっさと寝ろ!」
颯音はそのまま車を走らせた。櫻は鍵で自分の家に入った。真っ暗な部屋はどことなく寂しい。そのままリビングに行くと…絆が椅子に座ったままテーブルを枕にうつ伏せで眠っていた。
「もぉ…先寝てろって言ったのに…」
絆を優しく揺さぶった。
「絆?こんなとこで寝たら風邪ひくよ?」
「…んん…櫻?おかえり…」
「おかえりじゃないの。先寝てろって言っただろ?」
すると絆は急にぎゅぅと抱き着いて来た。
「絆?」
「入籍しちゃった…」
「え?うん…したね」
「結婚しちゃった…」
「うん?え?嫌?」
「ううん…嬉しい…すっごく嬉しい…」
「うん」
「櫻…」
「ん?」
「これからも宜しくお願いします」
「こちらこそ」
ゆっくりキスをして…一緒にお風呂に入った。そして深夜5時に眠りに着いた。
翌日は案の定颯音に怒鳴り込まれた。半裸のまま眠っていたので悲鳴と怒鳴り声が交った朝だった。
「普通さ…寝室には入って来ないよ」
車に乗りながらむくれた顔を櫻は浮かべていた。運転しながら颯音が返す。
「だったら8時に出れるようにしとけ」
「見たの?」
「はぁ?」
「絆の身体」
「それを聞くな。見ても意味ねーだろ」
「見たんだぁ…」
「お前な!俺が仕事だって何度も言っても出て来なかったくせに偉そうな態度取るなよ!」
「うるさいよ」
「うるさいってなんだよ…」
暫くすると唯が車に乗って来る。そして颯音の愚痴が唯に伝わり怒られた。その繰り返しの毎日に飽き飽きして来た頃…唯が失踪した。
夜中。最中に颯音から電話があった。
櫻『あぁもぉなんだよ!!!!』
颯音『櫻?今絆ちゃんと一緒か?』
櫻『当たり前だろ!?新婚なんだぞ!』
颯音『唯は?唯は一緒にいないのか?』
櫻『あのな。いくら仲良くても一緒にやるわけないだろ?』
颯音『そういう意味じゃない。今日は?一緒にいなかったのか?』
櫻『今日って…唯、インタビューだろ?俺が明日そのインタビューの続きって…言ってたろ?』
颯音『あぁ…でも来なかったんだ。一昨日、現場に直行するって言うから迎えに行かなかったんだ。でもいるはずの時刻になっても来ないから電話をしたり家に行ったが…誰もいなくて…実家に電話しても誰も取らないんだ…』
櫻『なんだよ、それ。なんで俺に連絡ないんだよ!!!』
颯音『取材は23時だ。先に家や実家に行くのは当たり前だろ…一緒にいないんだな』
櫻『いない…俺も探してみるよ』
颯音『頼んだ…』
電話を切って櫻は寝室に戻った。
「絆…」
「櫻?どうかした?」
ベットから起き上がって絆が聞いて来た。櫻は服を着始めていた。
「櫻?」
「唯がいなくなったみたいなんだ」
「え?うそ…唯くんどこにいるの?」
「わからないんだよ。颯音が電話しても出ないみたいなんだ…俺ちょっと実家に行ってみる!」
「実家?唯くんの?電話してみたら…」
「颯音がもうしたよ…でも誰も出ないって!実家は絶対誰かいんだよ」
「仁鼓ちゃんは?仁鼓ちゃんには通じてないの?」
「あぁ!仁鼓のこと忘れてた!」
「私電話してみる!」
絆は服をパーカーを頭からスポッとかぶりスマホを取って電話をした。だが仁鼓も出てはくれなかった。櫻はそのまま玄関に行った。
「櫻!仁鼓ちゃん出ない!」
「そうか…どうしたんだろうな…」
「うん…私も一緒に行くよ!」
「ううん!絆はここにいて?もし、唯がここに逃げて来たりしたら…入れないと困るだろ」
「あ…うん!わかった!気をつけてね!」
「うん!行って来ます!」
そう言って櫻は家から出て行った。
バイクにエンジンをかけて発進させた。唯の実家に迷わず進めた。実家の前にバイクを止めて…チャイムを押す。
「はい」
誰かいた。
「あ、明津櫻です。唯くんはいますか?」
「唯さんはいらっしゃいません」
「あの唯、仕事にも来てないんですけど…何か知りませんか?」
「申し訳ありませんが存じ上げません。」
ブツッと切られてしまった。
「ちょっ!待って…下さいって…もぉ…」
櫻は溜息交じりに唯に電話をしたが…出ることはなかった。仕方なく唯が行きそうなところを探したが唯は見つからなかった。颯音に電話をしたが颯音もわからなかった。仕方なく自宅に戻った。
「ただいま…絆、唯から電話とかあった?」
暗い部屋に入って行くと…。
「あ、櫻おかえり!」
「あ!櫻!」
居間には水を飲みながらくつろいでいる唯がいた。慌てた様子で絆がかけて来た。
「電話しようと思ったんだけど…唯くんにスマホ取られちゃって…」
「何してんの?唯…仕事…ってその怪我何!?」
唯の腕からは血が出ていた。
「あぁ…大丈夫!ちょっと殴られただけ」
「ちょっとじゃない!病院行こう!」
「あぁそれは無理!病院から逃げて来たし!」
「はぁ?逃げって…え!?」
「さっきも絆ちゃんに説明したばっか!」
「ばっかじゃねー!!!え?颯音にとりあえず連絡を…」
「してもいいけど…怪我の説明は出来ない」
「はぁ!?どういうことだよ!」
「そのままの意味だよ…」
「待て…怪我の説明をしろ!!!!」
唯は少し悩んでから絆を見た。すると絆は財布と鍵を持った。
「とりあえず、コンビニで包帯とか必要なの買って来るね!」
「え?あ、うん…気をつけてね!」
「うん!」
絆が笑顔で出て行くと…唯がため息をついた。櫻は『珈琲飲む?』と一言声をかけてからコップに珈琲を淹れた。