東方剣銃者

□一弾目
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十六夜 咲夜は歩く。
スラムのような路地裏を。
いや──実際にスラムであろうこの場所を。
ここは人里の商店を外れた一角である。
人里は活気がある。
が、そこは喧騒の全くない不健康な空気の漂った、文字通りのスラムだった。
人里が活気のある場所と妖怪達に認識されているが、正確には商店のある入り口や中心部分が賑わっているだけであり、その他殆どの場所が今咲夜のいるスラムとなっていた。
行き倒れた外来人や子敷、食う物の確保が出来ずに飢え絶えた住民がそこかしこに転がっていた。
咲夜はその中を平然と、時々死体を邪魔そうに睨み付けながら、慣れた足取りで進んだ。
慣れた足取りから分かるように、咲夜はこのスラムに何度か足を運んだ事があった。それは、主であるレミリアの食事のためである。
レミリア・スカーレットは人間の血を食料としていた。
無論人肉も食す。
その他にも、色々と凝った食事をするのだ。

「…少しは多めに買っていかないとね。」

憎々しげに呟いた咲夜。
先日購入した食料の奴隷は少し目を離した隙に逃げ出してしまった。
原因は雇っていた妖精メイドの不注意による鍵のかけ忘れ。
数人が拘束具を外して逃げ出したのだ。
まぁ、今頃は妖怪の腹の中だろう、と咲夜はほくそ笑んだ。

「今日もいらっしゃったんですね。」

少し考え過ぎていたらしい、目当ての奴隷市場へとたどり着いていた。
目の前にいる、醜く肥えた男は奴隷達を売る店主である。
汚ならしい顔に笑みを浮かべ、揉み手をして機嫌を取ろうとしている。
その姿が咲夜は大嫌いだった。

「えぇ。
悪いけど、すぐに見せてもらえないかしら。」

顔を見ないようにして言い、早く買い物を済ませたいという態度を示す。
この店主とも居たくないという理由もあった。

「はい、こちらです。」

咲夜が案内された場所は、カビ臭い牢屋だった。
異臭が鼻を刺す。
最も、何度も足を運んでいる内に慣れてしまっていた。
何列にも連なる牢屋には、少年から老人まで老若男女年齢問わずに容れられていた。
皆死んだ目をしている。
忌々しげに顔を歪めた。

「ああ、すみません。
なんせ維持に大変でして。掃除が行き届いてないんですよ。」
「お構い無く。」

咲夜は牢屋から目を離さずに言った。
品物を物色するように一人一人を眺め始めた咲夜。
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