東方剣銃者

□一弾目
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「…?」

一つの牢屋に目が止まる。明らかに最近ここに来たと思われる、それなりに綺麗な(とはいっても、服は所々切れていたりする)奴隷がそこにいた。
ギターケースを大切そうに抱きしめ、恨めしそうな視線をこちらに送っている。

「お目が高い。
こいつは今朝送られてきた外来人です。」
「外来人ですって?」
「ええ、見た事の無い服装、異様な武器、そして何より妖怪を恐れない無用心さ。外来人以外に何がありましょうか。」

きつい目を店主に向ける外来人を見て、咲夜は目を細める。
単なる気紛れではあるが、何より成人男性という事もあり、肉も多く取れるだろうと思い、咲夜は店主に言った。

「彼と適当なのを数人頂けるかしら?」
「おお、ありがとうございます。
えー、では計算して…」
パチッ
パチッ
パチッ
「これくらい頂けますかな?」

咲夜は店主の打ったそろばんを見て、目をみはった。

「…少しぼったくりすぎではなくて?」
「とんでもございません!
こいつに何人の傭兵がやられたと思ってるんですか。」

店主から聞いて、奴隷の男を振り返る。
未だに二人を睨みつける男が、酷く憎たらしく思えた。

「他のは値段は変わってません。
これ程高いのは、ソイツが反抗的だからですよ。」
「…わかりました。」

値切る事などこの店主には通用しない事を知っている咲夜は、仕方なく指定の額を払う事にした。

「毎度!
しかし、気をつけてください。
アイツは手錠を簡単に外しますからな。」

咲夜は更に頭が痛くなった。


――


奴隷達を辻馬車に乗せ、咲夜は紅魔館へのボート乗り場へとたどり着く。
ボート5隻をロープで繋ぎ、先頭のボート以外に奴隷達を乗せた。
定員は2人ほどだが、咲夜合わせて10人。
一人でも多く乗せると転覆してしまうので、咲夜はやむなくギターケースの男を同乗させた。

「…」

オールを力強くこぐと、少しずつ動き出した。
咲夜はギターケースの男を警戒しながら、対岸へと向かい始めた。
約十分位で、半分程に達した。
その間、ギターケースの男は微動だにせず、ただただ咲夜の姿を眺めていただけだった。

(…)

咲夜がギターケースの男に顔を向けた。
男は顔を反らす。
再び咲夜がオールをこぎ始めた時には、男は咲夜を見る事はなかった。


――
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