DI日記

□これが日常
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今日も今日とてディープアイランドにはちらほらとお客様が来ています。
けして多くはないですが、毎日幾人かの人がこのディープアイランドに訪れます。
彼女達(主に女性なので)の目的はただ一つ、自分達のマイナー欲を満たすためにここに来るのです。

この場所ではそれぞれがそれぞれのマイナー思考を持っており、表ではなかなか受け入れてもらえない
どマイナー発言や少しおかしな思考でさえも気兼ねなく口にすることが出来ます。
もちろん皆さんの趣味が必ずしも一致するわけではありませんが、相手のマイナーを受け入れられるくらいの心は持っているので気にせず話が出来ます。
まぁ、マイナー好きの人はマイナー好きという辛さを分かっている人がほとんどなのでそうそう相手を拒絶したりはしないのでしょう。


「深見さーん、こんにちはー!」


おや、あれは常連さんの一人、オーナーと最も趣味が合うと言われている常盤さんですね。
彼女はここではかなりの古株のお客様でして、たまにオーナーとマンツーマンの作戦会議なるものを開いているほど親しいのです。

「あ、常盤さんこんにちは。今日も来てたんですね」

「…はい!今日は後でオーナーとお茶する約束なんですよ。深見さんは今日はどんな感じですか?あ、それにそのつなぎニューバージョンですね!!」


深見さんは園内の清掃のためといって持たされているモップとバケツを置いて、今日も素敵に輝いている癒しオーラ抜群の笑顔で常盤さんに挨拶をしました。
その笑顔を向けられた常盤さんは少しにやついた顔をしましたが、すぐに元の顔に戻して会話を続けます。

「ええ、そうなんですよ。よく気づきましたね、今回はあんまり変更点なかった気がしたんですが…」

「だって、袖のところのボタンが熊から鷹に変わってるし、あと襟の形が前と違いますって!」

「よ、よく見てますね…着てる私より詳しい気がしますよ」

「へ?!あ、えっと、こ、細かいところに目が行く性格なんですよ、あはは」


ちょっと詳しすぎて深見さんに引かれ気味になってしまってますね。なんとかごまかそうと下手な言い訳を言ってみる常盤さん。
でも、そんな分かりやすいごまかし方で納得してくれる人なんて…

「なるほど、それでこんな小さな所まで…。常盤さんはきっと良いお嫁さんになりますね」


あ、いましたね。そうです、深見さんはちょっと天然さんというか人の事を信じすぎちゃうとってもいい人なんです。

「…あ…あ、ありがとうございます…(ちょ、何だこの眩い笑顔ぉぉ!!)」


この純粋さには常盤さんも勝てなかったようです…。すごいぞ深見さん、さすが園内の隠れマスコットキャラクターなだけありますね!

「それで、私の今日の予定ですか…えぇっと、今日はまだ予約入ってませんので大丈夫ですよ」


この予約というのは深見さんと一対一でお話が出来る時間の予約のことです。

このディープアイランドでは、入園するときに入り口で自分の持っているカードにスタンプを押してもらってから入ります。
そのスタンプが一定以上たまると景品をもらえるのですが、深見さんと一対一でお話できるという権利というのもあるのです。
これは、先着予約制で時間制限は30分です。一日に最大で3人までという少ない人数ですが、そのくらいで実は丁度いいのです。
一日平均の来場者数は10人なので、その人数で込みこみというわけではないのです。

ちなみに常盤さんが持っているのは、普通の人が持っている緑色のカードよりワンランク上の特別カードで、本当に常連さんしかもらえないブルーブラックカードです。
このカードを持っていると、いつでも深見さんの予約が出来るのですが優先順位は通常カードの人のほうが上です。

「じゃ、じゃあ予約お願いしますね。えっと、お昼の時でいいですか?」

「かまいませんよ、では今日もごゆっくり楽しんでいってくださいね」


横においておいたモップとバケツを取って深見さんは、素敵な笑顔と共に仕事に戻っていきました。





「うふふ、やっぱり深見さんは癒しだねぇ…おっさんの笑顔…あぁ、今日も良いもん見させてもらいました
 さ、今日は誰が来てるのかなぁ?オーナーは絶対いるだろうし…よっし、オーナーんとこ突撃しますか!」


深見さんが見えなくなるのと同時に、常盤さんの顔がなんだか…ああぁ、危ない人になってますよ…。



とまあ、こんな感じで毎日過ぎていくのがここの常識です。とりあえず飽きることはないとは思います、毎日騒がしいですからね。


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