涼宮/ハルヒの憂鬱

□届け、この思い
1ページ/1ページ


ダダダダダ…


「待てぇぇい、古泉ぃぃ!」

「絶ぇぇっ対に嫌です!!」


今、僕は全力で彼から逃げています。
何故かって?
それは貞操の危機が迫っているからです。
もちろん彼は好きなんですが(一応付き合っています)いざ求められると、恐くてはぐらかしてばかりいたんです。
そしたら彼が痺れを切らし無理矢理迫られたんです。
思わず逃げ出してしまったんですが、追い掛けてきて…捕まったら、どうなるかは容易に想像出来ますね?

だから必死なんです。




「ちょ、まず落ち着こう!冷静になって止まれ!」


「僕は至って冷静ですよ!それに止まったら貴方に捕まるでしょう!」


「そうだよ、その後が目的なんだからな!」


「キョンくんのケダモノ!」

「はっはっは、男は皆そういう生き物なんだよ!」




なんて言い合いながら部室棟をぐるぐる行ったり来たり。さすがに疲れてきましたよ…
今日一日でもう何回も通ったSOS団の部室前まで来ると、誰かに衝突してしまいました。


「きゃあ!」


「うわぁ!すみません!」


「何するのよ馬鹿!…って古泉くん!?」



偶然にも、衝突した相手は涼宮さんでした。
勢いよくぶつかったので、尻餅を着いてしまった彼女に手を差し延べ、起き上がると



「ハルヒ!そのまま古泉を捕まえておけ!」


「キョン!?」


しまった!今の衝突で彼を忘れる所だった!
申し訳ありません。後程改めて謝罪するので行かせて下さい!

彼女の手を離した瞬間、


ガシッ


両手を握りしめられた。しかも強い力で。
振り払ってでも行けばいいものの、やはり涼宮さんに逆らう事は出来なくて、



「は、離して下さい〜」


「なんだか面白い事になりそうだから、ごめんね古泉くん」



太陽のような明るい笑顔でにこにこと手を握ってくる…うう、涼宮さんι
そうこうしている内に、彼が追い付いきました。



「悪いな、ハルヒ。」


「別にいいわ。で、何してたの?」


「いや〜、せっかく二人になれたんだが古泉が逃げ出してな」


「それは貴方が勝手に!」


また会話が同道巡りして、言い合いになりそうになると涼宮さんが間に入って制する。



「ちょ〜っとストップ!!…ねぇ、キョン」


「これで一つお願いします」

「分かってるじゃない♪」



相変わらず仲の良いお二人は多くを語らずとも考えが分かるみたいです。まるで悪代官と越後屋のように金銭の受け渡しをすると、涼宮さんは勢いよく部室の扉を開け、




「有希、みくるちゃん!
今日の活動は休みよ!さっさと帰る準備して、お茶しに行くわよ〜!」


「ふえぇ!?わ、分かりましたぁ〜」


「……了解。」



慌ただしく(主に朝比奈さんが)鞄を手に取り部室を出ると



「キョン!後は好きに使っていいから、じゃあね〜」

「えっと、お先に失礼します。さよなら〜」


「…頑張って。」


一言ずつ告げ、女性陣は嵐のように去ってしまいました。
あまりに突然の事で、僕の全機能が停止していたのですが、考えてみると今置かれた状況は、二人っきりで誰もいない部室前。

これは…もしかして…

肩に手を回され、振り向くと彼がニヤニヤしながら



「古泉、邪魔は入らないからゆっくり出来るぜ」


「何を、ですか?」


「愛の営みさ。お前に対する気持ちをその体にじっくり教えてやるよ」





お気持ちだけで結構です!なんて言えずに部室へ引きずり込まれ…


散々な目に合いました。
その事は言わずともお分かり頂けるかと思います。





End
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ