■企画・記念小説部屋■
□道の先
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朝陽眩しい街中を駆ける。
固いアスファルト、散らばるガラスの破片が素足を傷付けることなど構わず駆け続ける。
必死に駆けてはあの姿を探す。どこへ行ったかはわからない。もしかしたらもうこの街を出たかもしれない。
だが――何故だか足は迷うことなく動く。自分でも不思議だがこの道がシキに続いていると、根拠のない自信があった。
肺が酸素を求めて悲鳴をあげる。
苦しさを堪えようと拳を握り込むと、掌を押し返す感触。
そう――部屋に残されていたこの十字架が、引き離されてしまった片割れの元へと導くのだ。早く追いかけろとせき立てるのだ。
「…っ、く……!」
悲痛なほど片割れを求める音の無い叫びに感化されるように、自分の喉からも叫びが迸った。
今まで憎しみを込めて何度も口にしてきた名を――求め、欲するように腹の底から。
「――キ…っ、シキ――――――っっ!!」
はるか前方、朝陽に溶け込もうとしていた黒い影がこちらを振り向いた。
(ああ、もうすぐ届く――)
手を、伸ばした。
少しでも早く届くようにと。
【道の先】
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