■企画・記念小説部屋■

□conflagration
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切っ先から落ちる赤い滴がアスファルトへ溜まっていく。言葉にならない叫びを上げながら逃げ惑う無様な男たちは、皆ラインに侵され酷く濁った瞳をシキに向けた。
それを見る度に腹の底からどす黒い殺意が湧く。あれに頼ったところでこんなモノだ。動きを注視せずとも力の半分も出さずに仕留めてしまえる。

あまりに退屈な戦闘の最中、頭は別のことを考え始めた。この者たちは何の為に生きているのだろうか。
中途半端な強さを誇示するためにイグラに参加し、少しも成果を上げられないまま麻薬と共に朽ち果てていく。それに比べて、自分には強さを維持し王として生き続ける天命があるのだと…。


(それを全うするために、ラインをバラ撒いているのは誰だ?)


どこからか声が聴こえた。


(その矛盾にお前は気付いているか?)


幻聴を切り捨てるように、最後の男に向かって刀を振りかざした。肉の割かれる感触が手に伝わってくる。


(…お前も所詮は…)


耳を掠める忌まわしき声と同時に感じた気配。静かに後ろを振り向けば銀髪の青年が立っていた。ラインを使用していないと主張するかのように、彼の瞳は澄み渡って見える。
今まで濁ったモノしか見ていなかったからだ。特にこの男がどうという訳ではない。そう自分に言い訳をしながらも、近付くことを止められなかった。伸ばした指先が彼の喉元に触れる。

「シ、キ」

たどたどしく紡がれた己の名前に思わず身体が反応した。こんな脆弱そうな男に刀を振るう気にはならない。けれど、胸の奥底でジリジリと音を立てているこの感情は何なのだろう。




conflagration
(灰になるまで共に燃えるか?)




***
「人魚の憂鬱」のあのさんから高速お返しSSをいただきました!
やっぱシキアキはいい…心が洗われる…
ありがとうございました!

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