■企画・記念小説部屋■
□拍手ログ2009年5月〜8月
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【キミが赤いワケ】
「フラミンゴが赤いのは元からじゃなかったんだー」
麗らかな昼下がりの聖域。
双児宮の庭では年少の黄金聖闘士たちが本を持ち寄り、サガやアイオロスに読んでもらいながら勉強をしていた。
「赤い色素を持つ小さな生き物をエサとしているから綺麗な色になるんだよ」
「へ〜……」
サガが指差しながら説明していく図鑑を覗き込みながらミロはきらきらと目を輝かせていた。
写真で見るその鳥は全身を覆う羽根が綺麗な朱色をしていた。
全身くまなく朱い個体、濃淡が美しい固体。写真でも見とれてしまうほどなのだから群れでいるところなどさぞ圧巻だろう。
「おーいみんなー、おやつだよー」
そんな美しい光景をうっとりと思い描いているとアイオロス達の呼ぶ声。
『おやつ』と聞いて年少の者たちは一斉に駆け出した。
皆で行儀よくテーブルに並んで待っていると、目の前に並べられたのは苺だった。
ガラスの器に盛られた赤い実はよく熟して甘い香りを放っている。
ミロはこの甘い果実が好物だった。
「いただきまーす!」
早速一粒口に放り込む。
口の中に見知った甘さが広がり、香りを楽しんではまた一粒食べていく。
ふと、ミロは苺を食べる手を止め自分の向かいに座るカミュの方を見た。
カミュも苺が好きらしく、嬉しそうに一粒、また一粒と食べている。
その時、熟しすぎてやわらかくなっていた苺が潰れ、カミュの指を汚した。
「あ…」
「おや…それは食べられないね、私のをあげよう」
カミュの隣に座るサガが自分の器から一粒取り、カミュに差し出す。
「口を開けて」
「ん……」
サガに言われるまま口を開け、サガの指ごと苺を口内に迎え入れる。
そして小さな唇から指が出て行くとカミュの白い頬がぽうっと赤く染まった。
「………!」
その光景を見て、ミロは何かを思いついた。
「なあ!カミュってさ!」
「?」
「苺たくさん食べたからそんなに赤いのか!?」
数秒後、自信満々のミロの顔にカミュの平手がお見舞いされ、しばらく口をきいてもらえなくなるのだった。
2017.5加筆修正
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