■企画・記念小説部屋■

□恋人達に聞いてみました
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【シキアキ(虎穴)編】



「こんにちは!突然ですがあなたが恋人とキスしたくなる時はどんな時ですか?」







「…はあ?」
 いきなり現れた妙な女に言われた言葉にアキラは素っ頓狂な声を上げた。

「あ、わたくしですね、もうすぐクリスマスが近いので世の男性達に恋人についてのアンケートを行っていまして…」
 クリスマスが近いとどうして恋人に関係があるのかアキラにはさっぱり理解できず訝しげに首を傾げた。
「ちなみにお兄さんは今恋人はいますか?」
 にこにこと押し付けがましい笑顔でマイクを向けてくる女に嫌悪感が込み上げる。
 Bl@ster時代にもこんなふうにべたべたと言い寄ってくるのがいたせいで女はあまり好きではない。
 ――ほら、現に今だってこちらがあからさまに迷惑そうな顔をしてみせても厚かましい笑顔を崩さず何かを期待するような目を向けてくる。

「…そんなもんはいない」
「えーっ、嘘でしょう?お兄さんこんなに素敵なのに!」
 しつこい。うざったい。こんな女に付き合っている暇などないのだ。
 一緒に歩いていたはずのシキの姿を探す。
 先刻まで隣を歩いていたはずのそれは既に無く、人混みの向こうに辛うじて頭が見える程度だ。
「実はいるけど言うのが恥ずかしいとかですか?」
「うるさいな、なんでそんなこと答えなきゃならない」
「あ、もしかして今片想い中とか?」
「……はあぁ?」
 思いっきり呆れた声で聞き返す。自分はそんなに恋に悩んでいるように見えるのだろうか。
 これ以上付き合ってられないと踵を返そうとした時だった。

「片想いしてる方はどんな方ですか?案外年上だったりとか?」

 年上。

 その言葉にある人物の顔がぽんと浮かぶ。しかしありえないと頭を振って掻き消す。
「案外可愛らしいタイプより大人でつれないタイプにぐっとくる方じゃないですか?」
 まるでシキのことを知っているかのような女の言葉にアキラはだんだん本当に自分がシキに片想いしているような気になってきた。
 女性リポーターのペースにまんまとはまってきたアキラはいつしかマイクに向かって話し始めていた。









「病気の想い人を看病で2年も支え続けるなんて並大抵じゃできませんよ。すごいじゃないですか」
「すごいとか、そんなのは考えたことがなかった。とにかく…必死だった」

 離れたくなくて――…



 抜け殻だったシキを守り目覚めの時を待ちながら旅をしていた時の感情が甦ってくる。
 ひたすらシキを想っていた日々。
 目覚めを待ち続けて幾日も過ごした記憶。



 "逢いたい――"



 まるであの頃の自分に戻ったようでいつもは憎たらしい不遜で傲慢なあのシキが急に愛しくなって、逢いたいと思った時だった。
 襟首を何かに掴まれ突如強い力で後ろへと引き倒された。
「っ!?シキっ!」
 痛みに顔を顰めて振り返ったそこには苛立ちを顕にしたシキが立っていた。
「何をしている」
 そのまま視線を滑らせアキラにマイクを向けていた女とカメラスタッフをぎろりと睨みつける。
「……くだらん」
 あまりの鋭さに震えあがる者、きょとんとする者。シキはそれ以上興味を失ったようにアキラの手を引きその場から立ち去った。





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