長編
□君との別れは、
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「犬夜叉は忘れるって決めた時、最後・・・ひっく、思い出が欲しかったの・・・口付けした時に、これで終わりなんだって思ったら、つ、辛くてっ・・・」
大粒の涙から決して目をそらさずに、犬夜叉は優しく頭を撫で続けた。最後の口付けの意味を知り、胸が熱くなる。
自分の腕にすっぽりと収まってしまうその小さな身体に、どれだけ重いものを背負わせていたのか──「ごめん」なんて軽い一言で済ませたくなかったために、ただ想いを込めて触れる。
止まる気配のない涙を見ながら犬夜叉は今までの自分の軽率な行いを呪った。
(今まで弱音なんて聞いたことがなかった。かごめはいつだって前を向いて、俺の手を引っ張ってくれていた。なのに俺は・・・)
自嘲気味にフッと笑う。
「お前を追い詰めて、泣かせてばかりいる・・・。最低な、男だな。」
かごめの身体が震える。
怒鳴られる、と反射的に身構えた犬夜叉だったが、予想に反して彼女は多少声を荒くしたものの甘えるようにすり寄ってきた。
「っ・・・私、最低な男の人なんかに嫁ぐ気ないから!」