長編
□感情分裂
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「あと10日の間に元に戻らなかったら、記憶がなくなるんだぞ。」
かごめはふっと表情を和らげ悲痛な表情をしている彼の首に腕を回した。優しく今日は特別に甘い匂いが犬夜叉を包む。
「言ったでしょう。それでも私は犬夜叉に恋をするわ。」
そうして口付けをねだるよう顔を近付けてきた彼女を犬夜叉は止め、苦しそうに目を細めた。
「そういう問題じゃねえ。俺はお前に思い出を忘れて欲しくねえから・・・・・・って何言わせんだ!」
柄ではないことを言ってしまったことに自分で赤くなる犬夜叉。緊張した空気はどこへやら──再びかごめは余裕を取り戻す。
「そんなふうに思ってたんだ。嬉しい。」
完全にかごめに流れを持っていかれる前にと彼はついに覚悟を決めた。
笑顔で甘えん坊な彼女ももちろん良いが、泣いた顔、怒った顔、照れた顔、それに拗ねた顔・・・・・・全てを持っているのが本当のかごめであり、自分が心を惹かれた女なのだ。
「だから、戻ってくれ。」