長編

□感情分裂
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井戸を潜(くぐ)り抜けた先にはちょうどその法師が居た。楓と何やら話し込んでいるようだが、さっそく今起きた出来事を伝えようと後ろ姿に近づいた。


「弥勒、かごめが……おわっ!?」


ふわりと甘い香りがしたかと思うと、犬夜叉の背中がグキッと嫌な音を立てて反り返った。腹に回された白い手と匂いで振り返らずとも誰の仕業かわかる。体当たりの犯人はあの甘えん坊なかごめだった。


「犬夜叉、会いたかったー!」


華奢な身体には似合わず強力な体当たりと抱擁。ギュウウウッと音がするくらい強く抱きしめられ体温が急激に上昇する。本音を言ってしまえば、犬夜叉はこのままかごめに甘えられていたかった。が、今は非常事態。


「か、かごめ、ちょっと退いてろ。」


なるべく優しく腕をほどくが、むくれてしまった彼女にやや焦る。と、そこへひょっこりと弥勒が顔を出した。先程井戸へ帰ってしまったかごめが居ないことに気づくと勘の良い彼は全てを悟ったようだった。


「……ということは、うまくやったようですね。」

「かごめの奴、いきなり消えちまったんだ。大丈夫だよな?」
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