長編
□君との別れは、
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かごめは現代へ戻ってはいなかった。
ただ犬夜叉のもとから離れた木の根本に座り、幹に背中を預けていた。
それは御神木ではない。
しかし太く、強く葉を広げている。
「あなたも、時代樹なの?」
頬につたう涙をそのままに、かごめは大木に話しかけた。
当然答えは返って来ない。
静寂に包まれた森の中、彼女の声だけが虚しく響いた。
それでも彼女は話を止めない。
「私はね、御神木っていう時代樹で、ある人に出逢ったの。」
「優柔不断の二股男よ。」
「最悪よね、本当にきらい。」
風が吹いて、ざわざわと葉が音をたてた。
彼女の言葉に同意するかのように葉は揺れる。
「・・・だいっきらい。」