長編
□感情分裂
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『花畑にでも連れて行って、ギュッと・・・・・・』──そんな弥勒の声が犬夜叉の頭の中で繰り返し流れていた。いきなり抱き締めることなど自分に出来るわけがないと彼は頭を抱える。しかし悩んでいる時間などないのだ。かごめの記憶が消えるという最悪の事態を防ぐために犬夜叉はいよいよ話を切り出した。
「その・・・・・・お前はかごめの感情の一部、なんだよな。」
「なんかそう言われてもピンとこないけどね。」
犬夜叉は突然彼女に横髪を引っ張られ無理やり目が合うようにさせられた。そこにあったのは笑顔。
「うじうじ悩んで嫉妬ばかりしている私より、ずっと笑顔の私の方がいいでしょう。」
彼はハッとした。
「それは違・・・・・・!」
その言葉を肯定するわけにはいかなかった。それはつまり残り二人のかごめを否定することになるからだ。色々な表情、感情を持っているのが“かごめ”という少女なのだ。
しかし彼の言葉を打ち消すようにかごめは口を開いた。
「そういえば最近温泉行ってないわよね。」