短編

□見せたくないもの
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身分の違いによって引き裂かれてしまった恋人達──今一番人気の泣けるラブストーリーを見に映画館へと来た犬夜叉とかごめ。

物語の展開に夢中になっている彼女を横目で見ながら犬夜叉は飲み物を一口口に含んだ。

正直、楽しくないのだ。スクリーンに映る他人の恋路なんて彼にとっては退屈なものでしかない。


(せっかくかごめの隣に居るってのに。)


映画に夢中になっている彼女の邪魔をして嫌われたくもない犬夜叉はただ黙って時を過ごすしかなかった。





物語の終盤──犬夜叉のポップコーンも底をついた頃。

かごめの横顔に何か光ったものが見えた。それは、ゆっくりと頬をつたい流れ落ちる一筋の涙。

あんまりにも美しいそれをずっと眺めていたいと思う反面、誰にも彼女の涙を見られたくないという独占欲に彼は駈られる。

そして気づけばかごめの顔を無理矢理こちらへ向かせ、自信の袖で涙を荒々しく拭っていた。
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