短編
□浮気疑惑
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教室に入り鞄を机に置いた時、ドアの方から自分の名を呼ぶ声がした。甘えたように語尾を伸ばすその特徴から、かごめはすぐに一人の女子を頭に浮かべる。
以前犬夜叉に告白した美佳だ。
目を向けるとやはり予想通り彼女。取り巻きは3人。人数が減ったことに些か安心してかごめは席を立った。
廊下に出た途端美佳はかごめに勢いよく抱きついた。そして、とんでもないことを大声で言い放つ。
「かごめえ〜あんたの彼氏、浮気してるよ〜!」
いつから下の名前で呼ぶようになったんだ、とか、語尾伸ばしすぎだ、なんて考えることは出来なかった。
かごめはただ固まり、その頭の中では「浮気」という言葉だけが何度も繰り返される。
うまく反応できない彼女に、美佳の取り巻きの一人が興奮気味に話した。
「昨日見ちゃったんだよね。朔牙と知らない女がキスしてるとこ!」
キャー!と、美佳達が歓声を上げる。その嬉しそうな姿にかごめは苛立ちを覚えた。
「人違いじゃないかな。どこで見たの?」