長編
□雨の味
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濡れた制服から着替えてくると、まだ少女は遠慮がちに立っていた。
いや、もしかしたらあまりに床が散らかっていて、座る場所がないからかも知れない。
「そこらへんにあるもん退けて座っていいぞ。」
少女はまた頷くと散乱している教科書やら雑誌やらを適当に積み重ねて・・・・・・やっと自分の場所を確保したようだった。
そして、きょろきょろと部屋を見回す。
「・・・一人暮らしなの?」
「おう。親とちょっと喧嘩しててな。」
俺が答えると、少女は慌てて謝り、口を告ぐんだ。
うつむいたときに、髪から雫が落ちた。
──ああそうだ、こいつ、かなり雨に打たれてたはず・・・
まだ使っていないタオルをタンスから引きずりだす。
「髪、濡れてる。風邪ひくぞ。」
それを無造作に少女に向かって投げてやると、
・・・初めて微笑んだ。
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