長編
□雨の味
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「・・・これからどうすんだ?」
「わかるわけないわよ、そんなの。」
日暮はため息をつくと手を握ったり開いたりした。
「朔牙くんを除いて、人間以外だったら触れるのにね。不思議。」
軽い言い方をしているが、きっとすごく辛いんだろう。
今日、雨が降ってよかった。でなければ、俺はきっと日暮に何の違和感も感じずに通り過ぎていただろうから。
「・・・親に事情説明しに行ってやろうか?」
日暮は首を横に振った。
「『日暮は今、魂なんです』とでも言うの?絶対、信じてくれない。」
確かに。
日暮の姿が見えもしないのに、俺の言ったことを鵜呑みにする奴なんかいないだろう。
「じゃあ、本体の日暮が意識を取り戻したら、ここにいる、日暮は消えるのか?」
「本体に戻るって言ってよね。消えるのは、・・・死ぬ時。」