長編
□雨の味
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事態が急変したのは、その3日後のことだった。
犬夜叉は彼女の呻き声で目を覚ました。
昨日まで腕の中で微笑んでいた少女が、今はとても辛そうな顔をしている。
「体が・・・熱い・・・!」
「かごめ!?」
その言葉に慌てて飛び起きる犬夜叉。
彼女の感覚の中に「熱い」はないはずだ。つまりこの症状はただの熱ではなく、彼女の“本体”に関係するものだろう──かごめの発した言葉は彼の予想通りだった。
「お願い・・・病院に連れてって。本体に、戻れそうなの!“かごめ”が私を呼んでる・・・!」
苦しそうに左胸の辺りをギュッと掴む彼女を抱き抱え、犬夜叉は頷くとすぐさま立ち上がった。
「わかった。すぐに連れてってやる!」
犬夜叉は適当な服を羽織ると、乱れた呼吸を繰り返すかごめを連れ外に飛び出した。