長編
□雨の味
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「美味しくなかったらごめんね。」
かごめの言葉に彼は首を横にふる。
美味しくないわけがないのだ。
もう何度も食べた彼女の手料理。味は立証済みだ。
真っ先に箸を卵焼きへと伸ばす。
久しぶりに食べたそれはやはこの一言でしか表せない。
「うまい・・・」
呟かれた言葉に、不安そうに眉を下げていたかごめは笑顔になった。
「ありがとう。」
口にタコさんウインナーを詰め込みながら、犬夜叉は彼女の持つピンク色の弁当をちらりと見る。
「かごめも食えよ、腹減ってるだろ。」
「うん、じゃあそうしようかな。お腹ぺこぺこ!」
箸を持ち「いただきます」と元気に言ったかごめも犬夜叉のようにウインナーを頬張る。
そんな彼女を見つめ、犬夜叉は幸せな気分になった。
魂のかごめには食欲がなかったために「お腹が減った」などとは一度も言わなかった。目の前の彼女が次々と箸をすすめる様子に「生きている」と実感させられる。