キリ番
□二人で
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「ニャアアア」
妖怪達が住まうとある森の中。
一匹の猫が木の上で爪を研いでいた少女に何かを知らせるように鳴いた。その声に少女はピンと頭上についた黒い耳と腰の下から生えた尾を立て反応する。
「また?しょうがないなああの馬鹿犬は……」
そう言うと同時に木から飛び降りる。人間ならば軽く骨が折れてしまうところだが、彼女はそうではない。人間ではないからだ。かといって妖怪でもない。その中間の半妖と言われる存在である。
少女――かごめは先程猫が教えてくれた所へ一直線に木々の間を駆け抜ける。そして緋色の衣が目に入った時、スウッと息を吸った。
「犬夜叉!」
犬夜叉と呼ばれた少年は無言で振り返る。頭の上にはかごめと同じような獣の耳。しかし彼は猫のそれではなく、犬耳である。
「何度言ったらわかるのよ、ここは私たちの縄張りなの!」
「けっ、そんなのお前らが勝手に言ってるだけじゃねえか」
後ろ足でババッと土を蹴りかごめにそれを浴びせる。行動と耳、そして鋭い牙と爪は彼が犬妖怪であることを示す。しかしその半化けの姿はまた人間の血をひいていることも表していた。かごめ同様、半妖なのである。