キリ番
□パパ、あのね。
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犬夜叉は山へ妖怪退治に、
かごめは川へ洗濯に──
そんなある日の話。
5歳くらいの子供が足をもたつかせながら走る。向かう先には秋を象徴する紅葉。太い木の根元まで行くと子供は振り返り大きく手をふった。
「とーちゃんこっち来てよ、すごく綺麗だよ!」
楽しげに弾むその声に少し遠くから答えるのは、その子の父親。
「おお、確かにそうだな。この美しさがわかるなんて、さすが俺の息子だ。」
誉められたことが嬉しかったのか、子供は顔をほころばせて父親のもとへ走り抱きつく。
楽しそうに笑い合いながら散歩する彼らを、遠くから見つめる者が一人。
かごめだ。
彼女は親子のその姿が見えなくなるまで見ていた。